ジュリアン・オピー展(東京オペラシティアートギャラリー)

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UKを代表する現代美術家の一人で、点と線という最小限の「視覚言語」により、 生き生きとした人物像や風景を表現する作風で知られるジュリアン・オピー。
ロンドンのテート・モダンでオピーの作品を観ていたので、久々に初台まで行ってきた。

 

今回は作品数が少ないと聞いていたけれど、これが(意外にも)予想を上回る面白さ。というか、webサイトの画像と実際の展示空間とのギャップの大きさを楽しめたといった方がいいかもしれない。

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展示室に入った瞬間、極端に単純化された線で描かれた横向きの人物群像Walking in NewYork1に目が引き寄せられる。HPの画像から想像していた以上に巨大な作品で、顔なんか描かれていないのに、それぞれの職業や趣味嗜好といった内面もなんとなくイメージできる。

ぱっと見た瞬間、あ、ここはロンドンだと思った。日本のそれ以上に狭い円筒形の空間が多種多様な人種や階級の人々でひしめいていた、ロンドンの地下鉄。わずか1.5メートル四方に居合わせた乗客の国籍構成は全員バラバラじゃないかと思われるほどだった。
帰国後に都内の通勤電車に乗ると、日本がいかに均質性の高い(あるいは著しく多様性が低い)国か、息苦しいまでに実感できたのを思い出す。
オピーが東京都心の街頭をテーマに制作したら…全員スマホを凝視しながら歩く群像になったりして(笑)。

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オピーの輪郭線は、浮世絵やアニメのセル画に影響を受けているとのこと。

パリにおける藤田嗣治ブームから100年近くたった現在でも、ヨーロッパのアーティストを捉えて離さない日本画の「線」の魅力は何なのだろう。(最近の日本のアニメは写実表現に走っているけど…)

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特に面白かったのは、立方体のコンピュータ・アニメーション作品が配置された第二展示室。
ビルのオブジェ(ボール紙製)や群衆の作品の合間に、カラスや人物のアニメーションが置かれるなど、平面-立体-立体-平面といった具合にメリハリのきいた配置になっている。その間を鑑賞者たちが歩き回ることで、作品と鑑賞者とのコミュニケーションが生まれ、都市の空間が立ち上がってくる…という面白さを感じた。

 

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コンピュータアニメーション「Carp」は、20枚のLEDスクリーン上をアニメーションの鯉が遊泳するインスタレーション。実際の鯉のように時折 池(スクリーン)の表面に浮かび上がっては沈んでいく鯉たちの動きが面白い。

今回の展示作品は、人物も動物(カラス)もすべて横向きのフラットな線描で表現されていることもあって、SNSなどの画像では実際の展示空間の奥行きを感じづらい。

この翌日訪れた都美の伊庭靖子展でも、いい意味でwebサイトとのギャップの大きさに裏切られたので、今後ちょっとでも気になったアーティストの展示なら、できる限り実物を見に行こう。