宝生会 春の別会能

☆宝生会 春の別会能
 能「鶴亀 曲入」 シテ:近藤乾之助
 狂言「二人袴」  シテ:山本東次郎
 能「西行桜」    シテ:今井 泰男
 能「道成寺」    シテ:小林 晋也
 (他に仕舞六曲)

先週に引き続き、水道橋へ。
大曲を重鎮が勤められる舞台というだけあって、いつもより華やかな雰囲気。
着物姿も目立ったので、ジャケット&ワンピースにしておいてよかったです^^

そして舞台も・・・さすがに密度が高く、晴れ晴れとした気持ちになれました。
前半の舞台はお囃子も地謡もしっかりしていて、耳が海綿状態に(笑)
特に仕舞(登坂武雄「八島」、佐野由於「藤」、東川光夫「昭君」)は
シテはもちろんですが、とにかく地謡の響きがすばらしかったです。
地謡は、金森秀祥、小林与志郎、中村孝太郎、そして辰巳満次郎。
あらためて、このお流儀が「謡宝生」と呼ばれていることに気づかされました。

特に印象に残っているのは「二人袴」と「西行桜」。

「二人袴」は過保護な父親と、精神的に幼い息子の婿入り失敗譚(^^)
東次郎さんの、明るく華やかで行間を読ませる演技に引きつけられました。
どこまでも息子に甘い東次郎パパから、もう目が離せない♪
心底楽しめた狂言って、これがはじめてかもしれません。

西行桜」は、今まで見た桜の能のイメージが変わる舞台でした。
ご高齢のシテが 桜の老木の精を演じられるので、動きもゆるやかなのですが
その限られた動きに、なぜか目が吸い寄せられて。
プラチナのようなサラサラストレートの白髪が、ブラウン系ゴールドの狩衣の背に
流れる様子はとても美しかったです・・・。
ワキの方々の謡のユニゾンにも、うっとり聴き入りましたし
お囃子、特に藤田朝太郎さんの笛が静かでやわらかく、
「これはね、夢だったんですよ」といっているかのようでした。


そして「道成寺」。
目の前で数十キロもの鐘が吊り上げられる様子、後見の人数の多さ、
これだけでも緊張感をかき立てるには充分なのですが・・・。
シテ(小林晋也さん)、小鼓(住駒充彦さん)ともに三十前後かな。
(ちなみに笛は一噌幸弘さん・・・ヘビ調伏の曲にはハマリ役かも ^^)

シテは華奢な雰囲気の方でしたが、よほど緊張されていたのか
鐘入り前の謡が、息切れしているようなのが気になりました。
白洲正子の本では、乱拍子は鐘楼の石段をじりじり登っていく様子を表しているそうですが
「おぉーーっ、おーっ」という体の底から突き上げるような小鼓の掛け声から
信じられないくらいの間をおいて、鼓と拍子を同時に打つ乱拍子は
シテと小鼓の一騎打ちというより、
小鼓が、背後からシテに気合を送っているように見えました。
見所の空気も薄くて、とにかく長い長い石段でした。

鐘入りはきれいに決まって、あちこちからため息、拍手する人も。
山本則俊さん演じる強力が、女人禁制を破ってしまってワキ僧に叱られている間
乱拍子を打ち終えた住駒充彦さんは、横を向いて座っていらしていましたが
流れ落ちる汗をしきりに拭っていて、遠目にもこの舞台の大変さが伝わってきました。
(小鼓のことばっかり!って言われそうだけど、シテは鐘の中だもんね・・・ ^_^;)

そして、満次郎さんと武田孝史さんが交替で鐘を引き上げ、大蛇登場。
大蛇に変身してからは、シテの動きもキレがよく僧たちとのバトルを見せ、
オレンジ色の唐織と鱗模様の摺箔が、吹き上げる炎に見えました。

ひとつ気になったのは、後シテ登場のときに
鐘の背後でべんべん弾くような音がしたのだけど、お囃子の音じゃなかったような・・・。
なにか他の楽器だったのかな?プログラムには書いてなかったけど??


ああ、それにしても観てるだけでカロリー消費・・・(- -)
ただでさえお腹すいてるところに道成寺だったので、
終演後は、日高川に飛び込むシテのような足取りで(←うそ)タリーズに直行して
チーズケーキとメープルシロップラテでエネルギー補給!!
お能観た後って、なぜか甘いものが食べたくなるんだよね。


あらら、気がついたら100本目達成しちゃった(^◇^;)