縦書きを楽しめる日本製万年筆「ELABO」

 
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 2~3日前のYahoo!映像トピックスに「外国人も驚く美しすぎる日本製万年筆」というタイトルで、「ナミキ ファルコン」という日本製万年筆が話題になっていました。
 「ナミキ ファルコン」は、全国万年筆専門店会とパイロットが共同開発した「エラボー」2代目モデルの輸出版。このトピックスの影響で、逆輸入された国内ではたちまち完売してしまったそうです。
 
 実は、やまねこは一か月ほど前にELABOの現行モデル(3代目)を買ってました。
 手帳用には容姿端麗なクロス「センチュリーⅡ」のEF(極細)を携帯していますが、
普段の書きものや手紙用の「本命」には、日本語の筆記に適した少しやわらかめのペンが欲しいと思っていたところ、パイロットの「色彩雫」インクを知って、日本製万年筆「も」視野に入れることに。
 「も」というのは、機能性やコストパフォーマンスはともかく、デザインの面で日本製はどーしても野暮ったいというかオジサンくさいので。だって毎日間近で見る「顔」はやっぱり好みのタイプの方が、長続きするじゃないですか(←何の話??)。
 
 このELABOはネーミングのセンス(選ぼー)こそ微妙~ですが、ずんぐりしたオジサンライクな万年筆が多いパイロットには珍しく(?)直線的なデザインで、黒×シルバーのカラーリングも(おしゃれとまではいわないけど)すっきりした感じです。
 
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 キャップのクリップは日本刀のようなシャープなフォルム。リングとクリップを一体形成する技術はパイロット独自のものだそうで、この部分にはかなり開発コストをかけたそうです。
 そして何より特徴的なのはペン先の形状。すぐ下の写真↓でおわかりのように、中ほどで大きく膨らみ先端が長くとってあり、まるで猛禽類の嘴のようです。おそらく、ナミキ「ファルコン(はやぶさ)」は、ペン先からつけられた名前なんでしょうね。
本家でもエラボーじゃなくて「はやぶさ」にした方がこのペンらしいのに・・・。
この独特のペン先がしなりを生み、日本語の「とめ」「はらい」の筆記に適しているのだとか。
 パイロットはELABOの開発にかなりコストをかけており(初期モデルはペン先の裏は漆塗りだったらしい)、発売当初は売れば売るほどコスト高になったとか。いかにも古き良き時代の日本メーカーらしい話ですが、買った後で読んだパイロットのHP「エラボーのペン先ができるまで」 「エラボー誕生秘話」も、そうしたこだわりがうかがわれます。
 やまねこは以前、かなり独自性の強い商品開発で知られるメーカーにいたので、こうした開発サイドのエピソードを読むのが結構好きです。
 
 
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 で、肝心の書き具合。写真は色彩雫「紫陽花」を使用して、小川洋子さんの「凍りついた香り」の一節を書き写したもの。筆圧をかけるとペン先がぐっとしなり、手の動きに合わせてペンが一緒に「走る」感覚が味わえます。フニャフニャやわらかい感じではなく、芯のある「しなやか」な書き味といったところでしょうか。特に縦書きの筆記ではこの「走る」感覚が顕著で、いくらでもスイスイ書けます。やはり日本語は縦書きに向いているのかな~。 今後、便箋は縦書きに統一し、プライベートなノートは縦横混在で書ける方眼紙にしようかとさえ思っています。
 あと、ペン先の形状のせいなのか(?)インク補充の際は、首軸までインクに浸さないと吸入できないのですが、ノズルを押すと「グビリ、グビリ」と音を立てて大容量コンバーターに吸い上げる様子がまるでウワバミ(笑)なのも、気に入りました。
 
 
 ところで、冒頭の動画についてELABOのユーザーとして書かせていただくと、
Yahoo!トピックスの動画のような筆記による線の強弱は、(通常の使い方をしている限り)ありえません。
 たしかにELABOはペン先はしなりやすく、筆圧が強めのやまねこが力を入れて書いても気持ちよくスラスラ書けます。インクフローがいいから文字の濃淡も出しやすい。でも、あの動画ではペン先がパカッと二つに分かれるくらい力をこめて紙を削るような書き方をしており、あんな使い方をしていれば早々にペン先が壊れると思います樹脂製のボディなら首軸ごと割れるかもしれません。あれは文字ではなくカリグラフィーの線を書いているので、あんな極端な書き方をしているのでしょうね。
(※ネットでの情報によると、メーカーから販売店に指導が入ったようです)
 
 ただ、あの動画でトピックスで「ナミキ ファルコン」に飛びついた人たちが、(万年筆の適切な使用法をふまえたうえで)万年筆のよさに目覚めて手書きを楽しめるようになったら、それはそれで意義があるのかもしれませんね。