千年前のかき氷

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 今年初のかき氷。
 お気に入りの本屋さんで、一日10食限定で提供している季節メニューです。生姜シロップとか甘さ控えめなラインナップで、迷った末に選んだのが蜂蜜すもも。
 最近流行りのインスタ映えしそうなメガ盛かき氷のボリュームはない代わり、氷の山が崩落することなく、甘く涼やかな氷をゆっくり味わえました。李とブルーベリーの爽やかな酸味が暑さを癒してくれます♪


 可愛らしいかき氷をいただきながら思い出したのが、枕草子の「あてなるもの」の段。

削り氷にあまづら入れて、新しき金鋺(かなまり)に入れたる

(現代語訳)
削り氷にシロップのように蔓草の一種である甘葛(あまかづら・あまづら)の汁をかけて、新しい金属の器に入れてあるのが実に優雅だ。

 製氷技術のない時代、夏の氷はたいへん貴重なもの。冬の間に池の氷を切り出して、山麓の蔵や洞窟の「氷室」でおがくずなどを被せて貯蔵していたといいます。能にも「氷室」という曲があって、夏になると仕舞でもよく上演されてますね。
 それにしても、削り氷に甘葛をかけて、よく磨かれた金属の器に盛りつけていただくなんて、千年以上も昔の器づかいの美意識が洗練されていたことに感心してしまいます。

 現代のかき氷も、器はガラスじゃなくて錫を使った方が、より「氷」らしくて優雅なのだろうけど。

 ひと椀の氷でちょっと幸せを感じた午後でした。