裁判長!ここは懲役4年でどうすか(北尾トロ著/文春文庫)

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中学生3年生の夏休み、地元の地裁へ傍聴しに行ったことがある。
社会科の担任がちょっと左がかっていて、歴史の時間に森村誠一の「悪魔の飽食」を一部抜粋したものを副教材のプリントに使ったりするような人だったのだが、夏休みの課題というのが「裁判の傍聴レポート」だったのだ。

なんとなくフラっと入った法廷は、窃盗事件の初公判。
できるだけ見やすい場所で、と思って座ったら、被告人がすぐ斜め前に座ってビックリ。
(どうやら被告人関係者の席だったようだ)
被告人は中年のさえないオヤジで、パチンコ好きが嵩じて借金に首が回らなくなり、
ついに窃盗に手を出したという。それも一度や二度のことではないらしい。
奥さんが証人として、被告人がいかに家庭を顧みないダメ亭主であったか証言する。
私のすぐ隣には、被告人の両親と思しき疲れきった感じの老夫婦。
子供ゴコロにも、ああ、この被告人は家族から見切られてるなぁ、
絶対繰り返しそうだナ、と被告の人間模様が鮮明に印象に残っている。


そんな経験があったからか、「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」は
結構サクサク読み進めてしまった。

交通事故で歩行者を死なせてしまい、本当に反省している様子なのに
よりによってドクロマークのシャツを着て法廷に出てしまう、ツメの甘い被告。

強制わいせつ事件の公判で、女子高生で鈴なりの傍聴席を前に、
いつもより張り切っちゃう裁判長。

法廷はドラマ以上にドラマティックで人間臭いのだ、
なにより傍聴席の自分もいつ被告人になるかわからない、と著者は繰り返す。
裁判所に出入りする人たちもかなり多種多彩だ。
やる気のない老弁護士、美人検察官、ナゾの「掃除の達人」、
そして裁判官の人事にやたら詳しい傍聴マニアまで登場。

失業期間中にこの本を読んでれば傍聴に出かけたのに。
就職した途端、一転して超激務に。クヤシイ!