金沢の底ヂカラⅢ(県立能楽堂「観能の夕べ」)

金沢の能楽堂には、毎年この時期になると 能をなんと1,000円で楽しめる
能楽の夕べ」という贅沢な企画があります。

私のお能デビューは、5年前のお盆休みにここで果たしています。
それ以来、都内の能楽堂にも行こうと思いつつ、そのまま金沢で2回目の鑑賞に。
やっぱり土地柄か、見所(客席)の雰囲気もリラックスしてるというか、
自然体で楽しんでいるという感じで、ブームだけに依らない根っこの部分で
能楽が地元の人に浸透しているのを感じさせます。

この日(8月11日)の番組は、以下のとおり。
狂言「鐘の音」/  野村扇丞 炭哲男
・能「半蔀」 /シテ:松田若子 ワキ:北島公之
        アイ:荒井亮吉 後見:高橋憲正 藪克徳
        小鼓:住駒俊介 大鼓:中村宗雄 笛:片岡憲太郎
        地謡:亀田肇 松島維成 前田繁 舘聖 佐々木英一 渡邊容之助
           玉川博 供田清作

本物の舞台を見て、一番印象に残ったのは狂言師でもシテでもなく、
意外にも囃方の動きと演奏でした。

小鼓・大鼓は演奏しないときは、そのつど床机をたたんで床に正座し、麻紐を組み直したり
してるので、いちいち面倒なことするなぁと思ってみていたのですが、
そのうち、彼らが演奏するときはシテが橋掛かりから登場する場面、
つまり舞台上に異界がたち現れるときだと気がついて目からウロコ。

もしかして、囃方というのは現世と異界の回路をつなぐ役割も担っているのかも、
と思いました。
確かにあの調べ、ずっと聴いていると妙に意識を覚醒させられるような・・・・・・。

鼓方は住駒さんという若い方でしたが、深くて張りのあるいい声で、
掛け声に聴き入っているうちに、気がついたら曲が終わっていたという感じでした。
この方は5年前の「熊坂」でも、出演されていた記憶があります(声とお名前に憶えが)。
松本清張の「声」じゃないけど、声って案外よく憶えてるものなんですね。
お名前からして、代々鼓方をされている家の方なのでしょうか?
この次は東京か、雪の季節の金沢で、住駒さんの鼓(声?)を聴いてみたいと思います。

それにしても、当初のお目当ての狂言ではなく囃方に注意がいくとはわれながら意外。