「日ごろは何ともおぼえぬ鎧が、今日は重うなつたるぞや」

今日は、取引先訪問のため久しぶりにスーツ着用。
スーツ着ると、自然と営業モードというか「攻め」モードに入ります。

外回り主体の営業職だった頃は、スーツは日常着でした。
たとえ内勤の日でも、せめてジャケット着ていかないと落ち着かないくらい。
それなのに、帰宅して玄関に一歩足を踏み入れたとたん、

スーツなんか一瞬たりとも着てられるかっ!
この化粧早く落としたい!

もののたとえじゃなく、本当に「重く」なるんです、スーツが。

それで思い出すのは「平家物語」の「木曾殿の最期」。

平家追討の功労者・源義仲は成功に酔って都で狼藉をはたらき、
後白河法皇から義仲討伐令が下され、部下とともに都を追われます。
愛人・巴とも別れ、ついに長年の忠臣・今井四郎兼平との二騎になったとき、
義仲が兼平にもらしたのがこのセリフ。

「日ごろは何ともおぼえぬ鎧が、今日は重うなつたるぞや」

虚勢を張る相手(巴)も去り、心許せる兼平につい弱音を吐いてしまう義仲に、
私は「男の可愛げ」を感じてしまうのです。
(巴なら、「私にこそそんな本音を見せてほしい!」と言うでしょうが)
「自然体」がおそらく必要以上にもてはやされる現代だからこそ、
カッコつけちゃう男に、グッときます。

もっとも、この後の男二人の会話で、妄想は軽く崩壊させられますが。
以下のやり取り、「本命は兼平?!」というか、男同士の愛が感じられ、
平家物語ってつくづく「オノコの文学」だなーと実感。

兼平:
「それは、あなた様に多勢が従っていないから、臆病風に吹かれたのでございましょう。
 兼平一人でも、千人いると同じだと思ってください。
 私が敵をくい止めますから、その間にご自害なさってください」
義仲:
「自分はお前と一緒に討ち死にするつもりでここまで逃れて来た。
別々の所で討たれるより、同じ所で討ち死にしたい」

悲壮っていうより「はいはい、ごちそーさまでしたっ!」と言いたくなりそう。

話が横滑りしましたが、「戦意喪失=鎧が重くなった」ととるなら、
帰宅した途端、スーツ脱ぎたい!っていう感覚にも通じますね。

特に今の季節、
スーツだけじゃなくてストッキングもうっとうしいですね。

炎天下でも、雨の日でも、外では何ともおぼえぬストッキングが
家に入ると、もう~~っ超不快になつたるぞや!

え?
義仲の鎧とストッキングなんか一緒するなって?

ま、「男性のネクタイ=女性のストッキング」で相殺ってことで。