宝生夜能

夕方、「顔色悪いね、だいじょうぶ?」と言われたのを幸い、
早退して夜能に行ってきました。色白の低血圧でよかった♪

●宝生夜能
枕慈童 /シテ:朝倉 俊樹
呂蓮  /シテ:大蔵 彌太郎
女郎花 /シテ:佐野 由於
http://www.hosho.or.jp/nou/2007_10/yanou.html

今日の番組、前半と後半の平均年齢の差がすごかった。
「枕慈童」は特に囃子方地謡が若くて、
私とあまり齢違わないんじゃない?っていうくらい。
舞台自体は決して悪くなかったけれど、後半の「女郎花」とは
明らかに舞台の密度に歴然たる差がありました。これはもう、しょうがないかも。

8月に金沢で聴いた住駒俊介さんの小鼓、ようやく再び聴くことができました。
思っていた以上にお若い方でびっくり。てっきり三十代半ばかと思ってたので。
実をいうと、住駒さんのお顔を見るのは今回が初めてなんです。
(金沢では、後ろの席でしかもパソコン用のメガネかけてたので・・・)
あらためて聴くと、やっぱり鼓も声も若いなーと思いました。
でも、住駒さんの声は凛とした、とてもいい「色」を持っていると思います。
聴いていて、なんだか清々しい気持ちになれるような。
金沢の方なのであまり聴く機会はないと思いますが、遠からずまた聴ければと思います。

曲そのものは、
「枕慈童」は、後見がフツーに作り物を運んできてたので、
「えっ、最初っからシテが隠れてたの?」とびっくりしました。
<永遠にトシとらない美少年>なんて、めでたいどころか気持ち悪いですけど。
王の枕をまたいだっていうのも、考えてみれば聞き捨てならない話じゃないですか。
舞いも男舞とは違う感じだし、これは男の美意識の産物かも、と思いました。

「呂蓮」は、奥さんに黙って高額な物(真空管アンプとか女性に理解されないもの)
なんか買っちゃって、後でセールスマンのせいにするオトーサンの話みたいです。
妻があんまりウルサイと秘密の行動が増えるぞっていうこと?まぁ怒るでしょうけど。

「女郎花」は、帰り際に斜め後ろの女性が「なんかわからないけど凄かった!」
と言ってましたが、まったく同感。
こちらは前半とうって変わって、おとなの世界。
後シテとツレの掛け合い、シテの舞に凄みがありました。
なぜこの夫婦が心中に近い形で死んだのか、よくわからないんだけど、
男女の業の深さを、生々しさを洗い流した形で表していたと思います。
歌舞伎や文楽だったら、もっとドロドロしてるかもしれないなぁ。
印象的なのは一噌幸弘さんの笛。音やビブラートのかけ方がフルートっぽかった。
膝に笛立てて座ってる姿は、まるで五ェ衛門。
笛がどう見ても斬鉄剣にしか見えませんでした(笑)

夏に比べると、少しは謡を聴き取れるようになってきたけれど、
それでもいい場面でよく聴き取れないことがあり、
そういう意味では常連さんっぽい人たちがうらやましいです。
基本がわかっているというのは、鑑賞する上でも幅が広がりそうなので。
つくづく、ニッポンのサラリーマンは忙しすぎですね。