雪のお正月 -「春の雪」と「ルートヴィヒ」-

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

今年は、新潟でも数年ぶりの雪のお正月を迎えました。

夜半に障子を開けて外をのぞくと、
古ぼけた水銀灯に照らされた雪が、スローモーションで舞っています。
伊藤整の「雪あかりの道」そのままの、静かな冬の晩です。

雪の新年にふさわしく、
今年一番のブックレビューは、三島由紀夫の「春の雪」。
豊饒の海」四部作の第一巻です。
ちょっと前の映画をご覧になった方も多いかと思います。
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維新で功をなした振興公爵家の嫡男・松枝清顕と
没落貴族の伯爵令嬢・綾倉聡子の
ついに成らない恋の物語。

最近、斜に構えるクセがついていかんなー、
と思ってますが・・・。
正直いって、ストーリー自体は時代がかった少女漫画そのものです。
相思相愛でありながら、
聡子が宮家と婚約して「禁忌の人」となってはじめて
彼女を本当に恋するようになる、
という人工的なオハナシ。
後半は聡子の懐妊→中絶→出家→絶望した清顕の夭折、
と韓流ドラマもびっくりの展開ですが、
そんな陳腐なストーリーを最後まで読ませるのは、
テクストを支える(三島独特の)論理性と、骨組みのしっかりした構成。
そして、映像的な描写の美しさ。
はやくも2合目あたりで、雪の朝の逢瀬というハイライトがくるので、
その後の、清顕にちっとも共感できない自分との戦いがしんどいですが(笑)。
でも6合目を超えれば先述の愁嘆場なので、あとはエンジンブレーキでOK。
まあ、きばって読んだ甲斐はありました。
読み終わる頃には、第二部「奔馬」の文庫買いに走ってましたから(^^;)


ところで、雪の朝の逢瀬のシーンを読んでいて唐突に、
ヴィスコンティの「ルートヴィヒ」(1972作)で、
狂王ルートヴィヒとオーストリア皇妃・エリザベート
雪の夜、並んで馬を駆りながら語り合う場面を思い出しました。
(ヘルムート・バーガーとロミー・シュナイダー、美しすぎ!!)
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絶世の美男美女のカップル、
女は禁忌の存在(皇妃)、
愛してもいない人との婚約と破局
男同士の愛情関係、
主人公の狂死、
という設定も驚くくらいそっくりです。
ありがち、といえばそれまでなんだけど。

ヴィスコンティの作品も、独特の美意識と論理性
(だけ)で創られた世界なので、
三島と似ているといえば、似てるかもしれない。
ノイシュヴァインシュタイン城の、悪趣味と紙一重の大仰なセットも
くどいくらい映像的な三島の文章と通じるものがあるなーと思いました。
あの人たち、きっと同じ星の住人なんだろうな(笑)

三島が割腹自殺をしたのは1970年、「ルートヴィヒ」製作の前ですが、
もし三島がこの映画を観ていたらどう思ったのか、興味深いところです。


(新年だからキレイに決めよう!と思ってたら、お耽美系に走ってしまった・・・)