荒野のグラフィズム:粟津潔展(金沢21世紀美術館)

このところ、忙しくてブログの更新をすっかりサボっておりました。
なので、今さら二週間以上も前の金沢ネタです。

1月4日、朝イチの北陸線で長岡を出て、鉛色の日本海を横目に金沢へ。
行程の2/3は新潟県内で、新潟ってほんとに横長なのねーと改めて感心。
親不知を越えたあたりから雪がなくなって、金沢はなんとピーカン。
せっかく「ゼロの焦点」のヒロインの気分だったのに~(←ばか)。
(ローカル線の旅には、松本清張の文庫本がよく似合うのだ)

まずは月並だけど兼六園へ。高台の空気が爽やかで気持ちいい。
兼六園出たところで初詣をしてなかったことを思い出し、すぐ横の石浦神社へ。
お守りを買って、神社出たところで紙袋を見たら
びっしり書かれたモロモロの効能に「八方塞がり」なんていうのがあった。
そういや、厄除のお守りだらけだったなー。
なのに、なぜか「良縁」だけがない・・・そおゆう神社なの??

気を取り直して、神社のお向かいの金沢21世紀美術館へ。ここは夏以来2回目。
ちょうどかかっていた企画がこれ。

「荒野のグラフィズム:粟津潔展」
http://www.kanazawa21.jp/exhibit/awazu/index.html
イメージ 1
グラフィックアートなるものには、とんと興味がなく
ましてこんな原色ギンギンの作品は、
都内だったらまず観に行かなかったと思う。
旅先の美術展のよさは、
まさにこの「たまたまやっていた」点にあるわけで
どうせ今夜は泊まりだしのんびり観ちゃえ~と
結果的にしっかり観ることに。
日本のグラフィックアートの草分け的存在だった人らしい。
確か、乱歩の「パノラマ島奇譚」装丁で見た記憶があるな。

一番キョーレツだったのは、阿部定の写真、印鑑、指紋、
モナリザのコラージュ作品。
なんか触覚的というか、皮膚の一部を貼りつけたのを
目の前に突き出された感じ。
埼玉県庁の「護憲週間」ポスターも、キッツイ逸品。
原色ギンギンの日の出の海に、目玉の親父みたいなのが浮遊していて、
椿の花を背負った亀が飛んでいるというもの。
「あなたの憲法への関心が、平和を守る 埼玉県」というコピーがブラック。
こんなヘンなポスター、二年連続で依頼した埼玉県はもっとスゴイけど(笑)。
でも私にはやっぱり色彩もタッチもキツすぎて、目がチカチカ。
いつもは図録買うんだけど、今回ばかりはさすがにパスさせていただきました。
同時開催中のコレクション展に入って、ほっと一息。

それなのに、いま具体的な作品を思い出せるのは
ギンギンにきょーれつすぎた筈の、粟津潔の方なのです。
3月までやっている企画なので、金沢にお立寄りの際はのぞいてみるのも一興かと。

この美術館、コンセプトがしっかりしていているのもいいですが、
建物そのものが作品であることが最大の魅力ですね。
ライブラリーやカフェもセンスいいと思うけど、
前回は見落とした「タレルの部屋」が、なかなかよかったです。
天井がぽっかり空いた部屋で、ベンチに腰掛けて空を見上げるというもの。
時間の移り変わりによって、少しずつ変化していく空がアート、ということらしい。
薄墨色の空にカラスが連なって飛んでいくのを、寒さも忘れて見上げていました。
ふだん、空なんか見上げず地面だけ見て暮らしてきたのに今さら気づかされます。
よーく見ると、天井の穴(?)の縁が黒く塗られていて、
フレーム効果を出すように工夫されているのがわかります。
ちょうどメンテナンスの直前だったそうで、ラッキーでした。
(それにしても雪が降ってきたら、どうしているんだろう?)

今回のショップでの戦利品も、なかなかキョーレツでしたが
その話はまた今度。