旅先の本屋さんで

旅先・出張先問わず、
時間の許す限り、その土地の本屋さんをのぞくことにしています。
それも、紀伊国屋とかリブロなどのチェーン展開の店じゃなくて、
地元で長年やってきました、みたいな「近所の本屋さん」的なお店。
店員さんのこだわりや、その土地のカラーの一端が垣間見える気がするし、
旅先だと、いつもは買わない本をサクッと手に取ることがあるから。

こないだ行った金沢は、
中心街・香林坊から通り一本入ったところに、
「うつのみや」という大きな本屋さんがあります。
ちょっと歩いたところには、姉妹店とおぼしきレコード店もある。
金沢なのに、何ゆえ「うつのみや」?
もちょっと、北国っぽいネーミングでもよいのではないか?
というギモンはさておき、昔なつかしの、紙の匂いがしてきそうなお店。
一般書籍のラインナップは、お店の規模相応といったところですが、
このお店の特長は、
淡交社(茶道関係の出版社。和のお稽古本が多い)の出版コーナーや
謡本(ただし宝生流のみ)のコーナーがごく普通にあるところ。
やはり土地柄かなあ。
都内の大型書店でも、謡本なんてめったにお目にかかれませんから。

『書店繁盛記』の田口久美子さん(ジュンク堂池袋店副店長)が、
「書店は知の最前線」と書いていて、
書店員じゃない私には、ちと大仰かなという気がしないでもないですが
あたらずとも遠からずかもしれません。

いわゆる一般書店で、謡本(あくまで一例、現代劇の脚本であってもいい)が
普通に手に取れる環境でこそ、文化は育つのかもしれない。
(東京との比較は、ここではさほど意味がないのでカツアイします)
翌日、能楽堂での謡本所有率の高さを目のあたりにして、
豊かさというのは、こういうところからくるのかもしれないなあと思いました。

結局、宝生流独特のくずし文字で書かれた謡本は私の手には負えず、
島本理生ナラタージュ」と田口久美子「書店繁盛記」を買いました。
二冊とも絶っ対アマゾンで買えそうな、分厚い単行本!
しかも金沢21世紀美術館でも本買っちゃうし。
荷物になるっていうのにさ!

でも買いたい時こそ ご縁なんだよね、本って(言い訳)。
人との出会いもそうかもしれないけど。

ったくしょうがないなぁ!!

(と、今回もまたキャリーケースが重い帰り道でした)