ロートレック展:パリ、美しき時代を生きて(サントリー美術館)

天保山、名古屋と巡回してきたロートレック展がようやく東京にやってきました。

酒をこよなく愛したロートレックとは、サントリーらしい企画。
ロートレックは、私の好きな画家の一人。だいぶ前に伊勢丹美術館で観て以来です。
今回は会期が短め(3月6日まで)なので、行けるうちに行ってこよう!
と、仕事帰りにミッドタウンへ。
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今回の見どころは、
日本初公開のオルセー美術館所蔵の油絵。
ポスターにもなっていた「黒いボアの女」が、
入ってすぐお目見えです。
思っていたより小さな作品、しかも厚紙に描かれているとは。
背景も、ボアの質感もささーっと描きあげたようなタッチなのに対して、
女の青白い顔と強いまなざしにだけ、ポイントを絞って描いています。
挑むような、強く妖しいまなざしにモデルの強烈な個性を感じます。
ロートレックの作品は写実的というより、
モデルの本質みたいなものを
鋭くつかみとって描いてしまうところに最大の特徴があると思いますが、
この作品もまさにその典型。
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ロートレックの作品は、ポスターやカードでさんざ目にしているけれど、
やっぱり実物を目の当たりにすると、彼の才能の凄さが実感できます。
たとえば、ダンサーの激しい動きの一瞬を、
しなやかな線で切り取ったように描いた
「ジャヌ・アヴリル:カフェ・コンセール」。
仙崖のタッチを連想させる「日本的な(?)」作品です。
そして色彩感覚。色数はせいぜい3,4色程度。
ベージュ‐ブラウン系×黒をベースに、赤かブルーでバシッと締める。
蛇を巻きつかせることで、しなやかな肢体を強調した「ジャヌ・アヴリル」には、
アール・ヌーヴォーの影響があるのでは?
と思いました。

娼館に入り浸って描きあげた版画の連作
「彼女たち」はすえた匂いまで漂ってきそうな
鬼気迫る迫力でした。
(このテの作品、私は好きじゃないけど)
しかし、「彼女たち」と信頼関係を築いて傑作を残した代償は大きく、
晩年のロートレックはアル中と梅毒に苦しんだ挙句、37歳でその生涯を閉じます。
解説の記述から推測するに、おそらく肝硬変だったんじゃないかと思います。
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今回も、ミュージアムショップで散財。
「54号室の女性船客」は、
伊勢丹美術館で見つけて気に入った作品だったので、
ポスターが出ていたら絶対買おうと決めていました。
ロートレックには珍しく、爽やかなタッチのポスター。
解説によると、船旅で出会った若く美しい人妻に惹かれた
ロートレックは、下船先を変更して
彼女の行き先(ダカール)までついて行こうとしたといい、
私的な想いがこめられた作品だそうです。
読書する手を休めて、青い海原を見つめている女性。
彼女のまなざしの先にあるもの、
これから始まる旅への期待と解放感が伝わってくるこの作品は
もうすこし暖かくなったら部屋に飾ろうと思います。