「ロートレック荘事件」(筒井康隆著・新潮社)

久々の読書コーナー。
金沢で買った「ナラタージュ」を取り上げようかと思っていたのですが、
昨日ロートレック展を見てきたので、こっちを先にUPします。

筒井康隆ロートレック荘事件」(新潮社)
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要約するとタイトルどおり、お金持ちの別荘で殺人事件が起きる話(笑)

ロートレック収集家の資産家の別荘(別荘をギャラリーにしている)に、
エリート青年たちと、美しい娘たちが集まってくる。
優雅なバカンスが始まるかに見えたのだが、
二発の銃声が惨劇の始まりを告げた・・・。
はたして邸内の人間の犯行か、そして動機は?
映像化不能前人未到の言語トリック。読者に挑戦するメタ・ミステリー。

この作品のレビュー、書くのが難しいのです。
メタ・ミステリーと銘打っているとおり、小説の作り方にトリックがあるので、
書きようによってはネタバレになってしまうから。
冒頭の「おれ」の語りから、本編に入ってしばらくすると違和感を感じる場面が
いくつかあるのですが、ここで最大公約数的な「常識」にとらわれてしまうと、
見事にだまされます。
なまじ、ロートレックについて知識がある人ほど引っかかるかも。

ミステリーファンには、好みがはっきり分かれる作品ではないかと思いますが、
この作品(単行本)、なんといっても装丁がカッコイイ。
本体に「ジャヌ・アヴリル」がプリントされていて、
その上に半透明のカバーがかかっているという、なかなか凝ったもの。
作中のロートレックの作品もたくさん挿入されていて、
アートとミステリーを両方楽しめる作りになっています。
1990年の作品なので、もはや図書館か古本屋でしか入手できないかと思いますが、
文庫本でなく、単行本で読んだほうが絶対楽しめる作品です。

今回のロートレック展では 作中、以下の作品も出ていました。

ムーラン・ルージュラ・グーリュ」
「ラ・ルヴュ・ブランシュ」
「アンバサドゥールのアリスティード・ブリュアン」
「ジャヌ・アヴリル」(※2月2日の記事、3番目の画像として掲載)
「ラ・ジターヌ」


あと、思いっきり蛇足ですが・・・
叙述だけでなく、作者の女性観もかーなーりー独特です。
語り手は若い男性のはずなのに、女性観が思いっきりオヤジ。
若い浜口&工藤と、木内典子の父・文麿の会話(女性の品定め)に
世代差がほとんど感じられないくらい。
そもそも、

20代の男性が、女性を賞賛するのに「マリア様」「観音様」なんて言うんかい(笑)