喜多流職分会 4月定例能

喜多流職分会 4月定例能

仕舞
花月 大島 輝久
田村 キリ 佐々木多門

「八島」  シテ 佐藤章雄
    シテ連 佐藤寛泰
    ワ キ 宝生欣哉
    ワキ連 舘田善博 野口琢弘
     アイ 善竹富太郎
     笛   槻宅 聡
小鼓   住駒充彦
大鼓   柿原光博  
地謡   井上 真也  梅津忠弘 友枝 雄人  出雲康雅
  高林 呻二  香川靖嗣 粟谷 浩之  中村邦生
後見    高林白牛口二  狩野秀鵬

狂言
「花争」 シテ  善竹 十郎
      アド  善竹大二郎


「源氏供養」舞入
     シテ  内田成信
    ワ キ  工藤和哉
    ワキ連  則久英志  野口能弘
     笛  中谷 明
    小鼓  大倉源次郎
      大鼓  亀井 実  
    地謡  佐藤 陽  笠井 陸  狩野 了一  粟谷能夫
        長島 茂  友枝昭世  大島輝久  粟谷明生
     後見   内田安信  松井 彬

仕舞  
  「放下僧」   松井 彬
    地謡  大島 輝久 狩野 了一 粟谷 明生 粟谷 充雄


「藤戸」シテ   金子匡一
   ワ キ  佐々木盛綱  宝生 閑
   ワキ連   坂苗 融  大日方 寛
    笛    寺井久八郎
   小鼓    曽和 正博
   大鼓    佃 良勝
   太鼓    観世 元伯  
    地謡    塩津 圭介  谷 大作  粟谷 充雄  大島政允
        金子敬一郎  塩津哲生  佐々木多門  大村 定
   後見    粟谷 幸雄 佐々木宗生

祝言


宝生流以外のお流儀を観に行くのは初めてです。
喜多能楽堂は、水道橋や金沢と比べてこじんまりした感じの能楽堂でしたが
ダーク系の内装が落ち着いていて、リラックスして観能できる空間です。
ロビーの壁に、手書き(筆)で番組表書いた半紙が貼ってあるのもイイ味出してました。
笛柱の位置が少し変わっていて、壁から独立して立っているのが目につきました。
地謡の入退場の時ジャマじゃないのかなあ?喜多流の人は慣れてるのかな)


「八島」
後述の藤戸でもそうだったけど、喜多流ってリアルな表現が多いなーと思いました。
たとえば、シテの動き。
前シテの老人は動きがヨタヨタしてて、摺り足もあぶなっかしい感じ。
てっきりシテは相当なご高齢かと思っちゃったくらいです。
それなのに!後シテで義経の亡霊になるや、キレのいい動きに。
これが宝生流なら、老人だろうと義経だろうとスッスッと出てくるところ。
その点、喜多流はわりと説明的な感じがしました。

お囃子は気合とパワーでどんどん前に出ていく感じ。
修羅能のお囃子は(技量はともかく)若手の方が好きです。
特に、前シテが合戦の様子を語るうちに、正体を現していく場面の大小鼓は気分よさそう。
住駒充彦さんは骨太というか、まっすぐな気魄を感じさせる小鼓。
お兄さんの俊介さんとは、また違う個性の鼓方みたい。
何かの本で、能では演者の個性を前面に出さないと読んだことがあるけれど、
今までいろんな方の演奏を聴いていて、同じ流儀、兄弟でも
囃子方の個性ってやっぱり出るものなんだなあと思って聴いています。
いつかブラインドで「小鼓は△△さん、笛は□□さん!」なんて当てられるようになりたい(^ ^)


「源氏供養」
内田成信さんの謡、すんごくクリアーに響いて直面かと思ったくらいでした。
地謡も実に美しくて、これはもう「謡」じゃなくて「歌」かという印象です。
トーンが明るめで子音をハッキリ発音してるせいか、ヒジョーに聴き取りやすい。
あまりの気持ちよさに、どうやらα波を出していたようで・・・・・・(以下略)


「藤戸」
先月観たばかりの宝生流との違いが面白かったです。
前シテはまだ黒髪の、30代後半かと思うような若い母親(宝生では白髪の老婆)。
装束も渋い色合いながら花が描かれていて、これで「老婆」と呼ぶのはヒドくない?
昔は十代で親になってるから、実際、40代手前の母親だったのかもしれませんが。
前シテのハイライト、佐々木盛綱から息子を殺した時の様子を聞かされる場面では
「胸を二度ばかり刺し」と聞いた瞬間、体をビクッと震わせたり、
盛綱に掴みかかっていく場面では、突き飛ばされた後も起き上がって腕を振り上げ、
やがて力尽きて座り込む・・・など、宝生流にはないリアルな表現が多かったです。
謡もね、前シテと後シテで声のトーンを変えてるんですよ!もうビックリ!
お流儀が違うと、同じ曲でもこうも変わるのか・・・と目からウロコでした。

そして曾和正博さんの小鼓。
冴え冴えとした軽やかな音色で、美しいとしか言いようがないです。
曾和さんは本日のひそかなお目当てだったので、じっくり堪能させていただきました♪

そんなわけで、全体的にスッキリしているのは宝生流
わかりやすいのは喜多流ではないかなー、と思って帰ってきました。
やっぱり、他のお流儀を観ると新鮮な発見があって楽しいですねえ。
観世や金剛、金春も観に行きたいです。