「鳥にさらわれた娘」/安房直子

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このところ、更新が滞ってますね・・・。
新潟出張の前から新しい仕事を任されて、いまはそれで手一杯という感じです。
でも、仕事もそろそろ落ち着くので来週お休みをいただくことにしました。

こういうときって、ネタはあっても書けるほどには温まっていないので
当分は無理のないペースで書いていこうと思います。

で、「温める」で思い出した物語。
安房直子の「鳥にさらわれた娘」

高校に入った年の夏に初めて読んだ本です。
安房直子さんの童話は 人間と動物の「異類婚譚」型の話が多いですが、これは「白鳥のように美しい」人間の娘に恋して、彼女をさらってしまうシギの話。

この物語では、シギは不思議な力を持つ鳥として描かれています。
それは、海の泡を長いくちばしで温めて光る珠に変えてしまうという力。

夜明けの海辺で、暁の光に照らされながら取り込んだ泡は深紅の珠に。
真昼の太陽の下で温めた泡は、黄金色の珠に。
そして月の光の下では、澄み切った銀色の珠に。

そのときの海の色を映した美しい珠を、彼女がほしいという色の珠を、
シギはやせ細りながら朝に晩に温め続けます。
実は、その珠でつくった首飾りをかけた人間はシギになってしまうのですが、
彼女の方ではイマイチ状況がわかってない(^_^;)
シギの方では別にだましてるんじゃなくて、
自分の気持ちを最初にちゃんと伝えてるんですけどねー。

そして、いよいよ最後の珠を温めるという晩・・・・・・。

すぐれた童話は、大人が読んでも充分鑑賞にたえ得るものですが、
この物語は一貫して彼女の視点に立つことで、
この後 彼女が直面する「現実」や女性としての成長も描かれています。
「鳥にさらわれた娘」を含む異類婚譚は、
現在は安房直子コレクション・恋人たちの冒険」(偕成社に収録されています。
他にも「熊の火」では、うだつの上がらない青年が、やはり熊の世界から逃げてきた
熊の父娘と火山の煙の中で一緒に暮らし、熊の娘と結婚して子どもまでできるのだけど
その生活にも満足できず、結局人間の世界に戻っていくという話もあります。

話は戻るけど、シギが海の泡を大事に大事に温めて光る珠に変える場面
・・・ものを書くのに似ているかもしれないなあ、と思ったのでありました。
ま、私の場合は光る珠どころか駄文ですけど・・・首飾りにはしたくないですね(^_^;)