観能の夕べ・特別公演

☆観能の夕べ・特別公演(8月16日・石川県立能楽堂
  仕舞「高野物狂」 近藤乾之助

  狂言「雁大名」  野村祐丞

  能「満仲」 シテ :佐野由於
        満仲 :広島克栄
        幸寿 :山崎悠吾
        美女丸:山田尚
        ワキ :殿田謙吉
        間  :炭哲男
        笛  :吉野晴夫
        小鼓 :住駒俊介
        大鼓 :飯嶋六之佐
        地頭 :近藤乾之助

帰省する前に、金沢にちょっと寄り道してきました(^_^;)
なので、この記事は新潟の家で書いております。

夏の金沢はとんでもなく蒸し暑いのですが、
この日は朝から断続的な雨で、能楽堂の外の方が寒かった・・・。
「高野物狂」「満仲」と、能が武家の後援を得ていた時代を想像させる
かなり渋ーい番組でしたが、意外に(?)面白かったです。
この能楽堂は 座席が舞台寄りというか前寄りの配置らしく
気をつけないとお囃子の音がきつく聴こえる可能性に思いいたり、
水道橋よりちょっと後ろの列に微調整してみました。
開演前の解説の間、奥から小鼓を打つ、ぽん!ぽん!という音が聴こえてきて
ああ、いよいよ始まるなという感じ。

「高野物狂」
近藤乾之助さん、白い紋付に濃いグレージュの袴姿が、
地謡勢の黒紋付とコントラストをなしていて、とってもオシャレでした。
(↑地謡の皆さま、ゴメンナサイ!)
春の別会の「鶴亀」もよかったけど、やっぱり仕舞も見なくちゃ。
渋い朗々とした謡がすばらしく、この方の独吟をお聴きしてみたいです。
(そういえば日経のインタビューで、毎朝の謡稽古が健康の秘訣!とおっしゃってたなあ)

「雁大名」
扇丞さんの太郎冠者と主が首尾よく万引きする場面が見せ場なだけに
「うまくいったね、ヒヒヒ」と主従が話し合う場面は長くて蛇足な気がしました。
んー、なんというか、もうちょっと楽しめる曲じゃないかという気がするんだけどな~。

「満仲」
歌舞伎にも似たような曲がありますね。「先代萩」だったかな?
私、この曲を観る前に(一応)予習してきたのでした、粟谷明生さんのサイトで・・・。
(他流で予習してどーする!と言われそうだけど、宝生の教材が見つからなかったのだ!)

幸寿を斬る場面、喜多流では子方は首を起こしたまま横向きに倒れるんだそうです。
「首を床につけると生々しくなるから」だそうですが、それでも充分ナマナマしいですって。
なので、「あーそろそろヤな場面が・・・(>_<)」と思って観ていたのですが、
宝生の幸寿は斬られると同時に扇を持って立ち上がり、切戸口から退場するんですね。
生々しくないというより、幼い健気な生命があっけなく散ってしまった・・・という感じで
仲光の眼に映ったであろう、幸寿の死のイメージと悲しみがより深く迫ってきました。
その場面、舞台には嘆き悲しむシテの姿しか存在しないように見えた。
シテの抑制力と集中力には、眼が離せませんでした。
こういう曲だからか、お囃子も幸寿を斬る場面と終盤の舞以外はずーっと抑え気味。
最初から華やかに奏する曲より、このての曲の方が集中力を要するんじゃないかなあ。

宝生流の「あなたの想像力にお任せします」的な演出は、悲痛な曲ほどハマリます。
芥川龍之介の「手巾」的世界とでもいいましょうか。
涙ひとつ流さないけど膝の上でハンカチ握り締めてます、みたいな。

それにしても寒かった・・・・・・。帰り道、広坂まで下りた頃には土砂降りに。
地謡の渡邊荀之助さんが切戸口をくぐる時咳き込んでらしてたけど、お風邪かしらん。
そっちもちょっと気になって眼で追ってしまったのでした。