Gesicht

浦沢直樹の「PLUTO」、アトムがやっと覚醒しましたね。
オリジナルの「地上最大のロボット」(手塚治虫)でいけば、
そろそろ終盤のはず・・・なんですが、どうかなあ?浦沢だし。

「地上最大のロボット」も併せて買ったのですが、
「地上~」のプルートゥはいやに男っぽいオジサン顔で
ウランちゃんとの交流がなにやら微妙にエロチックだったのに
浦沢版ではオリジナルに漂うエロティシズムというか性の匂いが全くない。
プルートゥはあくまで「メカ」な外観で、無機的な感じ。
エプシロンが中性的なイケメン君だったのでちょっと期待(?)したのですが(←何を)
そういう展開もなかったなあ。
手塚ならそんな資源のムダ使いはしなかったでしょうに(笑)
(そういえば、手塚治虫って割と危ない雰囲気の作品多いと思いませんか?)
浦沢版の特質ってそういうエロティシズムではなくて、
作中でも繰り返し語られる「憎しみ」とか、負の感情表現の絶妙さにあるのかも。

で、タイトルに戻りますが
浦沢版で私が一番好きなキャラがロボット刑事・ゲジヒトなんです。最初の場面では
「世界最高のロボットなんだから、なにもこんな地味なオジサンに作らなくても・・・」
と思ったけど(笑)、読み進むにつれてハマりました。
いかにも主役!なアトムや、見るからにいい人!なエプシロンより
自分のダークサイドも自覚してる分、深みがあっていい味出してると思います。
雨の中、アトムに見送られて「ロボットなのに胸がいっぱいになった」り、
奥さんのヘレナに対する信頼感がふとした表情に現れるのもいい感じ。
いいなあ~ゲジヒト♪

浦沢直樹って映画のカメラワークみたいなカットが多くて
登場人物の微妙な心理描写や緊迫感が絶妙にうまい作家だと思うのですが
そのよさが「PLUTO」で最大に活かされてるキャラがゲジヒトだと思うのです。
1巻で「ロボットと人間を識別するには・・・人間はムダな動きが多いんですよ」
なんて言ってたくせに、指先とか視線のゆれにムダ多すぎるぞ!!(笑)
でも、なぜゲジヒトなんだろう?と考えた末、出した結論は
「ゲジヒトが一番ふつうの人っぽい顔をしているから」。
主役顔とか、天馬博士やアブラー博士みたいな強烈なルックスのキャラって
意外と表情の振れ幅が少ないんじゃなかろうか。
つまり、ふつう顔のキャラをちゃんと描ききっているのは、
やっぱり画力があるということなんだろうなあ、と思ったのでした。


※そういえば、「ゲジヒト(Gesicht)」ってドイツ語で「顔」という意味でしたね・・・。