響の会 第33回研究公演

☆響の会 第33回研究公演
仕舞  「半蔀」クセ  西村 高夫
     「経正」キリ  清水 寛二

狂言 「酢薑」 
     シテ(酢売り) 野村 万作
     アド(薑売り) 石田 幸雄

袴能 「卒都婆小町」一度之次第 
     シテ  山本 順之
     ワキ  宝生  閑
     アイ  宝生 欣哉       
      笛   一噌 庸二
     小鼓   大倉源次郎
     大鼓   柿原 崇志
   地頭  清水 寛二  
後見   観世銕之丞


思いがけず、夕方早くに直帰できる仕事が入ったので
表参道の銕仙会能楽研修所に袴能を観に行ってきました。

この能楽堂プラダカルティエ路面店が並ぶオシャレな通りに面した
コンクリート打ちっぱなしのビルの2階に入っていて、
知らなければ、能楽堂があるなんて絶対気づかなさそうな佇まいです。
コンクリートの壁、スタジオのような照明に、ほどよく黒ずんだ檜舞台。
しかも座布団に座って観能という、古典なんだかモダンなんだか、フシギな空間です。

「半蔀」「経正」
間際になって知った公演だったので、仕舞の曲まではノーチェックでした。
先日の半蔀で夏の見納めのつもりでいたのに、また半蔀で秋を迎えるとは・・・。
でも、この「半蔀」は正直なところ肩すかしでした。
地謡がばらんばらんな感じで、好きなクセなのにいまいち気分がのっていかず。
「経正」では、空気がガラッと変わってシテも地謡も息がピタッと合っていて、
同じメンバーなのにどうしてこうも違うんだろう?不思議~。

狂言「酢薑(すはじかみ)」
解説によると、薑(はじかみ)は古くは山椒を、後には生姜を指した言葉だそうです。
酢売りと薑売りが、商売の司(権限)をめぐって秀句(だじゃれ)争いをするオハナシ。
万作からは自然にうふふ、と笑いを引き出される感じ。大笑いじゃないですね。
石田幸雄の酢売りに負けまいと間髪いれずにダジャレを口にする
負けん気ジイサンっぷりが なんかかわいかったです。

袴能 「卒都婆小町」一度之次第
能がしっかりと描かれた油絵なら、袴能ってデッサンといった印象です。
面や装束をつけてなくても、わりと自然に観られました。
紋付姿で99歳の小町と彼女に憑依する深草少将を演じるのは、
面や装束をつけた場合とどちらが難しいのでしょうか?

一度之次第という小書は、シテが先に舞台に登場する特殊演出だそうで、
切り裂くような笛と、地を這うような大小鼓の掛け声で、陰鬱な墓場が現れます。
今夜の源次郎&崇志コンビはとってもよかったです♪
二人とも低く低く、内に力をためるような打ち方&掛け声(うなり声?)で、
冒頭のよどんだ、冷たい空気が地表にたちこめている様子や
零落した身を嘆く小町に、突然少将が憑依した緊迫感がありありと伝わってくる。
こういうの、お囃子の独壇場ですね。演奏はもちろんだけど
源次郎は鼓を打つ手元もキレイなので、前の方の席で役得でした。

そんな囃子方の気を受けて立つシテの気魄もなかなかのもので、
前場の僧との応酬では寝てたけど・・・(^_^;A)
かつての美しかった自分の姿を語る場面からが面白くて、
もう取り戻せない若さへの妄執、一転して、
恋の鬼となった少将が憑依して狂う場面は一気に観たような気がします。
シテの額や首筋が汗で光って、みるみる襟元をぬらしていく。
こういう臨場感って、小さい能舞台のいいところかも。
観世の謡は子音をハッキリ発音するせいか、わりと聴き取りやすい感じです。
ビブラートをたっぷりきかせるので、オペラっぽい響き方をする場面もありました。

それにしても、一週間空けず続けてお能を観るのって体力いるなあ~。
(演じる方はもっと大変である)

<おまけ>
袴能、とあったのでファッションチェックも楽しみにしていたのですが
色とりどりの紋付袴は、意外にフツー。
黒(紋付)は、男も美しく(?)見せる色みたいです。