国家指定芸能 能楽特別鑑賞会(第一部)

能「清経/恋之音取」
 シテ:金春 安明
 ツレ:高橋 忍
 ワキ:村瀬 純
 笛 :一噌 仙幸 /小鼓:観世 新九郎 /大鼓:亀井 忠雄
 地頭:高橋 汎

狂言「柑子」
 シテ:野村 萬

舞囃子高砂
 シテ:香川 靖嗣
 笛 :松田 弘之 /小鼓:亀井 俊一 /大鼓:大倉 三忠 /太鼓:金春 國和

能「融/思立之出 酌之舞」
 シテ:浅見 真州
 ワキ:宝生 閑
 笛 :一噌 庸二 /小鼓:曽和 正博 /大鼓:國川 純 /太鼓:観世 元伯
 間 :野村 扇丞
 地頭:野村 四郎


今月は休日出勤続きで土日の観能もままならなかったので、とうとう振替休日を取得。
なにやら人民大会堂で京劇、の方が似合いそうなネーミングの公演ですね(笑)
今日は珍しく全曲お囃子が「当たり」で、まだ耳がほわわ~んとしています(^-^)

「清経」
はじめての金春流&仙幸さんの「恋之音取(こいのねとり)」が今日のお目当て。
笛の名手であった清経(清盛の三男で、平家の敗退中に入水自殺をする)にちなんで
シテの登場する場面では笛方が幕に向かって静かに笛を吹く、という特殊演出です。
恋之音取の間は出入禁止の旨、注意書きが貼られておりました。
仙幸さんは やや線が細いけど、余分なものを削ぎ落として磨き上げたような笛。
イメージ的には琳派の描く桔梗や秋草の蔓のような、繊細ながら華やかな雰囲気で
この笛を聴けただけでも足を運んだ甲斐がありました。

その笛の音とともに現れたシテは、なんとも不思議な雰囲気のお方。
「聖人に夢なし~」の第一声が独特のお声でビックリ。謡い方も不思議。
鼻にかかったような、よく通るふくみ声(形容矛盾)っていうんでしょうか、
昔、ドラマで怪人二十面相を演じた羽佐間道夫がこんな感じの話し方だったので
相思相愛の二人の掛け合いも、怪人、いや雑念が・・・(~ヘ~;)
こんなことを書くといかにも悪かったみたいだけど、そんなことはありません!
カドのない、ポイントはずさないキレイな舞いで、立ち回りも実にスッキリ。
装束は、金箔で襟まわりと裾にアジアンテイストな唐草文様をほどこしたグレーの法被に
簡素な朱色の厚板と大口姿。観世や宝生に比べてとてもシンプルコーディネートでした。
あ!書き忘れるところでしたが、地謡ズの健闘ぶりもよかったです。
二十代、三十代の若者だらけだったのに、本日の地謡で一番びしっとまとまってました。
金春の若手、要チェックです♪

「柑子」
狂言って飲み食いする演技、ほんとおいしそうですね。
休みの前日にビール飲んでると、「伯母ヶ酒」とか「舟渡婿」を思い出しちゃう私。
これもジューシィなみかん!って感じで、主の涙も実は悔し泣き?と思ったほどでした。

高砂
こういう華やかなお囃子大好き。こちらも笛方の松田弘之さんがナイスでした!
特に、結界をぴーん!と張るようなヒシギの緊張感がたまりません。
香川さんの舞も地謡も、実にきびきびと若やいだ雰囲気でした。
喜多流ってきりっと爽やかな感じが私の好みかも。あぁスケジュールさえ合えば・・・。

「融」
こないだの「卒塔婆小町」の失敗(前場で気持ちよく寝てた)に懲りて、
宝生閑さんの謡には目を爛々と光らせておりました。
シテは融だけど、本当の主役は六条の院(融の心の中にある)じゃないかと思う。
閑さんの僧は実に聴き上手です。シテとの掛け合いで、在りし日の屋敷の造園の様子が
写実的に語られていくのが見所で、後場の華やかな舞を自然に導いているんでしょうね。
解説では「楽しげに舞う」とあるけど、ほんとは哀しい舞じゃないのでしょうか?
後場の融の舞が楽しげなほど、囃子が華やかなほど、
その栄華がもう二度と戻ってはこないのだという現実を突きつけられるような。
くどいようですが、この曲もお囃子(特に小鼓&太鼓)がよかったです。
曾和さんの鼓の微妙な変化、すーっと眠りに引き込まれていきそうな心地よさでした。

というわけで金春デビューも果たし、残るは金剛流だけです。
第二部には金剛流の「内外詣」(金剛流にしかない曲だそう)があったのですが。
あ~~疲れたもう出よっ!と思っていたら、
「本日は入替え制なので、第二部ご鑑賞の方も退出してください」
なんてアナウンスが流れるではありませんか!
第一部開演は午後1時、第二部終演予定は午後9時。ヒョエ~~ッ!
いったいどういうヒトたちなんだろう・・・。