代々木果迢会「三井寺」

独吟「夜討曽我」 浅見 真高

仕舞「生田敦盛」 小早川 泰輝
  「夕顔」   浅見 慈一
  「高野物狂/道行」浅見 真州

能「三井寺
 シテ:小早川 修
 子方:小早川 満子
 ワキ:宝生 欣哉
 間 :高澤 祐介
 笛 :一噌 隆之
小鼓 :大倉 源次郎 
大鼓 :亀井 広忠
 地頭:浅見 慈一

金曜日、6時ちょっと過ぎに取引先を出たあと歩いて代々木能舞台へ。
ちなみに会の名前「果迢」はカチョウと読むらしいです。

この代々木能舞台は、浅見真高氏宅の庭を挟んだ屋外にあるもので
「昭和初期に都内に数箇所あった屋敷内舞台の現今では数少ない遺構の一つ」とのこと。
個人のお家に能舞台があるなんてすごいですね。
脇正面に当たる部分は空庭になっていて、橋掛かりの松も根の生えた本物です。
能舞台の高さはわずか60cmほど。座敷で座っているすぐ目の前で演者を観られるのです。
まるで戦前にタイムスリップしたような気分でした。

(公式HP。舞台の写真が見られます)
http://www3.ocn.ne.jp/~masakuni/yoyogikatyou.html

最近、ばっちり予習した上で観よう!と気合入ってましたが、今回は当然そんなのムリ。
でもそれがかえってよかったのか、無心の耳に謡がひたひたと沁みてきました。
謡のことばと旋律の絶妙な組み合わせに 時々はっとさせられました。

三井寺」は、橋掛かりを渡ってくるシテの横顔の美しさに見とれました。
面は深井だと思いますが、近くで見ると増と深井の間くらいの若さ。とても上品な面です。
このおシテは立ち姿がまっすぐで美しく、たいへん臈たけた雰囲気の方。
鬘を束ねた襟元もすっきり優しい感じでなんともいえない色香があります。

後シテの登場ではタイミングよく風で葉ずれの音がさーっと鳴って、臨場感たっぷりです。
物狂姿の装束は、白に近いグレージュの水衣、純白×プラチナゴールドの摺箔、
縫箔は青の勝った紺地に紅葉と鴛の意匠。縫箔の裏地は葡萄色です。
中秋の名月を意識した(と思われる)、透明感のあるコーディネートでした。
後シテで物狂になってからの謡は、高音域に上がるとき甘く響くのですが
ヴィブラートをやたら効かせることもなく、スッキリ優美な謡い方です。
物狂の母親にしっとりした色香を感じたのは初めてでした。

この日のお囃子、源次郎が調べ緒をしゅるしゅる結び直している様子を至近距離で観察。
広忠のターコイズブルーの袴、なんか、ヘン。
床机より座布団三枚の方が似合いそう(笑)・・・なのはともかく
半分屋外みたいな環境なので、お囃子の音が上にすーっと拡散していい感じでした。
空庭の背後は一般住宅。謡やお囃子が聴こえてくる住環境とはウラヤマシイです(^ ^)