私の「嵯峨野明月記」-野々宮-

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先週、大阪出張のあと京都へ行ってきました。
金曜の午後から土曜の夜までの短い時間だったけれど、
美味しいもの食べて、お寺めぐって、古都の秋を満喫してきました。

金曜の夕方にとびこんだ高台寺の庭もすばらしかったですが
紅葉直前の嵯峨野をそぞろ歩きできて、心が洗われるような気持ちになりました。

今回訪れたのは
天龍寺~野々宮神社~常寂光寺~二尊院~化野念仏寺~清涼寺~龍安寺
この夏夢中になった辻邦生の「嵯峨野明月記」、そして謡曲の舞台でもあります。

嵯峨野にゆかりのある謡曲は私が知っているだけでも
「野宮」(野々宮神社)、「祇王」(祇王寺)、「定家」(常寂光寺、二尊院)、
「融」「百万」(清涼寺)、そして「小督」。


上はその野々宮神社。ホンモノの「野宮」です。
源氏物語」の女君で、特に好きな女性というのはいないのだけど、
お能を観るようになってから、六条御息所を見直すようになりました。
東宮妃で知性と教養にあふれた魅力的な彼女には、若く未熟な源氏は釣り合う恋人ではなく
「葵上」事件後、絶望のうちに源氏から離れようと御息所がこもったのが、この野々宮。
斎宮として伊勢に下向する娘とともに、潔斎のためここで都での最後の日々を過ごすのです。
実際に、この野々宮に行ってみて、御息所は源氏から離れようとしつつ、
都を離れる前に彼が会いに来てくれるのを待っていたんじゃないか・・・という気がしました。
嵯峨野と「都」の微妙な距離が、彼女の心理を物語ってるのでは・・・。

で、上の写真は苦労して撮った黒木の鳥居です。
苦労というのは・・・鳥居から一歩入ると、縁結び祈願の絵馬だの神石だので中は結構にぎやか。
普通に写真を撮ると、朱色の社や絵馬がワアワアギャアギャア騒いでるような感じです。
しかも、出入口には人力車のお兄ちゃん(割とイケメン)が客待ちで並んでるし~(^_^;)
でも、黒木の鳥居は、清々しくいかにも心身を浄められそうな趣があってよかったです。
人気のない夕暮れなら、こんな場面があってもおかしくなさそうな雰囲気は残っていました。

 夕暮の秋の風
  森の木の間の夕月夜
   影幽かなる木の下の
    黒木の鳥居の二柱に
     立ち隠れて失せにけり
      跡立ち隠れ失せにけり