東京巽会・あまねく会

今年も行ってきました~「あまねく会」。
満次郎様門下「『全員集合!』会」と、私は勝手に呼んでいます(^m^)

今日は諸般の事情で午後から観に行ったのだけど、
お素人の発表会といえど、地謡囃子方は玄人だからそれなりに楽しめるし、
なによりこういう時に 仕舞の「**之段」「**クセ」をたくさん観ることで
その曲のハイライトというか、見どころ聴きどころがつかめるのがヨイ。
地謡が四人のせいか、満次郎様が地頭のせいか、今日の謡は輪郭がくっきりしてました。

面白いなーと思って聴いていたのは、仕舞「砧」の謡。
待てど暮らせど帰ってこない夫を待ちかねた妻の嘆きと怨み言の場面でしたが
妻の感情が昂って(このまま押すだろう)と思うようなところで、
いったん気を溜めて、ぐぐーっと強く引くような謡い方が意外というか面白かったです。
意外なんだけど、かえって妻の情念が感じられるような気がします。
波打ち際に立っていて、引き潮の意外な強さに驚かされる、あの感じに似ている。
これも、金沢の「満仲」で感じた「『手巾』的世界観」につながるのかな。

あと、今日はじめて「連吟」というものを鑑賞しました。
目付柱に向かって斜めに並ぶのは、音の響きを計算に入れたからでしょうか?
一つの曲に、仕舞、独吟、連吟、舞囃子、居囃子、素囃子・・・上演スタイルの多さが新鮮。

今日のお目当ては、もちろん満次郎様の舞囃子「安宅」♪

この曲、6月に観世流でやはり舞囃子で観ているのですが
シテの観世喜正が上体をまっすぐ起こしたまま高く跳躍したのが印象的。
宝生流でそんなハデな跳躍するとは思えなかったけれど、
なにしろ満次郎様の弁慶ですからね!期待は高まります。

さて満次郎様、青みがかったクールな紫系の紋付で登場。
囃子方は一噌隆之、大倉源次郎、亀井広忠~~と、いつものトリオです。
でも今日ばかりは源次郎どころじゃなかった。ごめんね源次郎・・・。
宝生の弁慶は、やはり(というか当然というか)跳躍こそしませんでしたが
満次郎様が私の期待を裏切るはずもなく(ファンとはそういうもんである)、
舞台の上を自在に(すり足で!)かけめぐり、足拍子を高らかに踏み鳴らします。
この人の足の運びは なんて力強くキレイなんだろう。
満次郎様の身体能力と集中力の高さは驚くほどで、一つの動きが終わって次の動きに移る瞬間
コンマ何秒かの「静」に、動いている時以上の「力」や「気」を感じさせる。
宗達の「風神雷神図屏風」の、背景の金泥が決して空白ではないように、
この人は動きを止めた瞬間にこそ、観る者を引きつける力を持っているのでは、と思います。
三間四方の舞台がシテの身体の延長というか、シテと一体になっているように感じられ、
今日もあっというまの舞囃子でした。
「五雲のゆかり尽きせじと~」でハッと我にかえる私・・・。

それにしても、月並にも仕舞を出してほしいな~と思うのは私だけ?
別会とか金沢でしか仕舞を観られないのって、なんかもったいない気がする・・・。