杉本博司「歴史の歴史」(金沢21世紀美術館)

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さて定例能の前日にさかのぼって土曜の夕方、今年3回目の金沢21世紀美術館へ。
白一色の、直線と曲線の交錯する21美は私のお気に入りの場所のひとつ。
これで今年度の企画展はひととおり観たのではないでしょうか?
写真は、雪がうっすらと積もったレアンドロの「スイミング・プール」。

この「歴史の歴史」は、今年いちばん面白かった企画展です^^
写真表現をメインとした杉本博司の作品と、彼の収集品による企画。
はずかしながら私、杉本博司はこの美術展で初めて知ったのですが、
この人のコレクション、本当にすごいんです。
入ってすぐに土偶や古代ガラス、ウミユリの化石が展示されててビックリするのだけど
死者の書の断片、室町時代の能面、第二次大戦中のタイム誌、60年代の宇宙食の食べ残し・・・
そんな混然とした「サンプル」に、杉本の近作が自然に隣り合わせている不思議な空間。
サンプルを通して、かつて生きてモノを作った人と、その時代の気配を体感しよう
という試みなのかな~と思いました。
ちょっと土俗的な古い能面のような、作り手の気配が濃厚なモノほど、
作り手の生の痕跡と死を、同時に、強く感じさせてしまうんですね。
杉本の作品もまた、「今、ここ」から死へ、その先の未来へ流れていくのだ、というような。

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ここへは事前に企画展を選んで行くというより、その時たまたまかかっていた展示を
そのまんま(自分の好みはおいといて)観ちゃう、というパターンなのですが
これが意外と面白いのですよ~。
自分で選択するのは大事だけど、気づかないうちに視野が狭くなってしまうこともある。
あえて「選択しない自由」「偶然の機会」に身を委ねるのも、たまにはいいかも。

今回も、ミュージアムショップで本を数冊衝動買い。
杉本の「苔のむすまで」(評論集というよりエッセイっぽい)と、建築関係の本。

こんな寒い日なのに、金沢の子どもたちは本当に元気いっぱいで
美術館の曲面に沿って走りながら雪合戦したり、雪だるまをつくったり・・・。
やっぱり美術館は街なか、生活の場にあったほうがいいなあ。