国宝 阿修羅展

行ってまいりました、「国宝 阿修羅展」。
日曜の午後遅い時間、しかも雨なら少しはマシかも・・・と思ったのですが、甘かった!
「第1章 興福寺中金堂鎮壇具」は、展示ケースの前にたどり着けないくらいの混雑。
でも、さすが東博が力を入れたという企画だけあって、展示数は決して多くないながら
見ごたえのある催しでした。

展示構成は以下の通り。
「第1章 興福寺中金堂鎮壇具」
「第2章 国宝 阿修羅とその世界」
「第3章 中金堂再建と仏像」
「第4章 バーチャルリアリティ映像『よみがえる興福寺中金堂』『阿修羅像』」

(第1章はほぼスルー、第4章はパスしました。。。)

イメージ 1
今回の目玉は、八部衆十大弟子像と、運慶の手による四天王像がほぼ一堂に会するところ。天平鎌倉時代の国宝・重文クラスの仏像がまとめて観られるのだから、見仏好きにはたまらない企画でしょう。
各像の展示スペースもゆとりをもって設置してあるので、一体一体、正面だけではなく横や斜め後ろも鑑賞できました。
特に八分衆・十大弟子の表情と彩色がすばらしく、簡素でありながらたおやかな美しさに見とれました。
第2会場の運慶作の四天王像がマッチョ&ユーモラスにデフォルメされてるだけに、その時代に求められる「美」の違いがわかりやすかったし。
連れは四天王像の方が気に入ったようだけど、これは好みの問題ですね。


で、本命の阿修羅像。
他の八部衆とは別に独立した展示コーナーが設けてあって、阿修羅像を設置した円形ステージの周りを観客が時計回りに進みながら鑑賞するというスタイル。
円形ステージに向かうスロープの両サイドには、阿修羅像の各部分のズームアップ映像が展示されてるのですが。。ふっくらした唇や、華奢なウエストのズームばっかり。なんか、アイドル写真集みたいです(^◇^;)
仏像界のアイドル・阿修羅くんをひと目見ようと観客が押し合う様子はまるで通勤ラッシュの山手線状態。見ようによっては、なにかの宗教団体のイベントみたいでしたが・・・。
最前列にはスタッフの女性が二人、「お一人様一周でお願いします!」「みなさん一斉に移動してください!せーの!!」と声を張り上げているのですが、文字通り揉みくちゃにされながらの鑑賞でした。お二人とも、お疲れ様でした・・・。

イメージ 2
阿修羅像を見たのは中学の修学旅行以来ですが、写真で見る以上に若いというより幼い顔なのが意外。
正面の顔はせいぜい12,3歳くらい?
ようやくおのれの男性性に目覚めかけた少年の顔。
右の写真は、阿修羅像向かって左側の顔です。
上の写真、正面の顔と比べるといくぶん幼い感じ。
眉根を寄せ、下唇をぐっとかみしめる表情は動揺に耐えるかのよう。右側の顔は左の顔よりやや年嵩ですが正面より若い感じで、唇こそかみ締めていないものの、きっと見据えるような眼差し。
正面の顔は一番静かな表情ですが、内面の葛藤を感じさせます。
三面が徐々に大人の表情になっていくのが印象的。
阿修羅は闘争の神だというけれど、闘う相手は帝釈天ではなく、おのれの内面ではないかしら・・・と思わせる表情でした。

イメージ 3
右は入江泰吉撮影の阿修羅像(1950頃)。
私が目にした実物の印象に一番近い写真です。
入江泰吉は、阿修羅像を「清純な乙女のようだ」と書いていますが、確かに、美少年というのはほんのひと匙の女性性を併せ持つ者をいうのかもしれません。
能の「喝食」の面のように。
男でも女でもなく、大人でも子供でもない阿修羅像に 天平の人々は天上の美を見出したのでしょうか。 
もっとも、俗世の塵芥にまみれた私たちの目には、神々しさより妖しい美しさを感じてしまい、「セクシーな像だねえ」などと言い合っていたのですが・・・(^◇^;)
ついでに、高校時代に倫理の先生が「日本で仏教が広まったのは、当時の日本人にはあのスキンヘッドが『いや~んセクシー♪』と映ったからかもしれない!」と(身もだえ付で)力説していたことまで思い出してしまいました。
こんなお馬鹿な衆生は救済されないだろうなあ・・・。

それにしても、展示場内の年譜を見ると藤原氏の権勢のほどがうかがわれて、今さらながら東大寺興福寺藤原氏のお寺なんだなあ~と実感。
一応、国文科で万葉集もかじっていたので、天智・天武以降の天皇家系図は頭に入っていたつもりでしたが、あらためて系図を見ると旧皇族系(蘇我氏系)の天皇が、藤原氏系の天皇にとって代わられる様子が一目瞭然。
なんだか、もう一度修学旅行に行きたくなってしまった私でした。


<本日のおまけ>
常設展示「能『国栖』の面と装束』が本日(24日)までだったので、平成館から本館へ移動したら
本館で上村松園の「焔」を発見。御息所様は山種には行かないのかしら?
山種で「砧」「草紙洗小町」「焔」を観たいな♪と思っていたので、知らずに行かなくてよかった!
他の常設展示も思わず足を止めてしまうものが多く、さすが「国立」博物館・芸術のデパートだねえ~と感心した一日でした。