「古代ローマ帝国の遺産-栄光の都ローマと悲劇の都ボンベイ」(国立西洋美術館)

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つい先日終わった美術展です(ゴメンネ~)
会期終了前日に行ってきたにもかかわらず、混雑もほとんどなくスムーズに鑑賞。
と書くと、いかにも地味~な企画では・・・と思われそうだけど、これが予想を裏切る充実の内容。
地味だったのは宣伝(特に国立西洋美術館のサイト)。
美術展では企画内容は当然だけど、ある意味で広報はそれ以上に重要かも。
もっと集客を促す仕掛けをする努力も必要じゃないの?文化事業仕分けも大鉈振るわれるのに。

・・・という文句はここまで(笑)

このローマ展、西洋史塩野七生好きな人にはたまらない企画だったのではないでしょうか。
ローマを共和制から帝政に変えた初代皇帝・アウグストゥス帝の時代を中心に、ローマの繁栄とボンベイの富を実感できる展示内容でした。

第1章「帝国の誕生」

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上の写真は二つともローマの「始皇帝」・アウグストゥスです。
左はカエサルの養子だった頃の若き「オクタヴィアヌス」時代の肖像、
右はローマの神ユピテル(ジュピター)に模した、皇帝としての座像。高さはなんと215cm!
これイタリアから持ってきたんですよね・・・どうやって輸送したんだろう・・・。
塩野七生の本によると、アウグストゥスは身長170cmほどの美男子で生まれつき虚弱体質だったそうだけど、右の座像は厭味じゃない程度にムキムキしてますね(笑) 私なら、顔さえ好みなら
170cmもあれば充分じゃないかと思いますが。(←何の話だ)
76歳まで生きたにもかかわらず、彼の肖像がイケメン30代の(ギリシア風に理想化された)ものしか造られなかったのは、肖像が政治的なイメージ戦略に使われたことのあらわれだそうです。
今なら岡田さんの瞳に星を入れて選挙ポスターにしちゃうようなものでしょうか??(^◇^;)

第2章「アウグストゥスの帝国とその機構」
ローマの神々の大理石像や宮殿の壁画(の一部)を、これでもか!と大盤振る舞い。
修復を加えているとはいえ、やわらかさを感じさせる大理石のテクスチャーにうっとり。
手をふれたら、大理石の肌の下に血のぬくもりが感じられるのではないかと思えるほどで、
大理石の美女を妻にしたピュグマリオンの伝説も、こうして見てると納得できます。
火葬された遺骨もそのままの青いガラスの骨壷もあって、ついこのあいだ葬儀が行われたばかり
・・・と錯覚するような保存状態の良さ。ガラス技術よりそっちにびっくり(^_^;A

第3章「帝国の富」
ここではジュエリーに銀食器、水道の弁、ボンベイの出土品などを展示。
ゴールドに真珠やエメラルドをあしらったジュエリーは割とシンプルなデザインで、
アレンジすれば現代でも使えそうなものが多かったな~。
見どころは、東大の調査団が発掘したベスヴィオス山にほど近い宮殿の遺跡から発掘された、
小さな豹と葡萄を腕に抱いて微笑むディオニュソス(酒の神)の像。まさに両性具有の美。

そして、圧巻はこれ↓

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ボンベイから出土した邸宅「黄金の腕輪の家」のフレスコ画です。
ちょうど壁画三面分、それも実物(!)をそのまま展示。
写真の壁画、中央が四角くくりぬかれているのは噴水の開口部なのです。
とても紀元前1世紀頃のものとは思えない彩色の鮮やかさ、
見ているだけで幸福感が漂ってきそうな壁画。この画は生きている、と思いました。
この他にも、貝殻をちりばめた色鮮やかなモザイクの噴水台の実物も再現されていて、
ボンベイの繁栄ぶりがうかがわれる、見ごたえ満点のコーナーでした。

ル・コルビジュエ設計の美術館そのものを観察し忘れてしまったのは不覚でしたが・・・。

図録(一番上の写真)はムック本みたいな構成で、読み物としても楽しめる内容。
眺めているうちに、諸般の事情から手を出さずにいた「ローマ人の物語」を読みたくなり、
図書館から文庫本4巻分、一気に予約してしまいました・・・(この話はまた今度)