京都・金沢旅行記 金沢篇②

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京都も古い町家が残っていますが、金沢は街がコンパクトな分、ちょっと横道に入っただけで藩政期の匂いを残した町家をいたるところで見つけることができます。

写真の「立野畳店」は、繁華街をひょいっと横道にそれた細い路地にあり、この場所に偶然迷いこんだときは、ネオンで彩られる夜の街の谷間にこんな空間があるのかと驚かされました。
看板によると、約200年前に建てられた・しかも現役の、町家だそうです。

金沢市指定文化財「立野家住宅主家・土蔵」
                種別  有形文化財 建築物
                指定  平成平成十五年九月十一日
 立野家は代々畳店を営んでおり、明治初期にこの建物を所有している。建築年代は十九世紀初期と推定されている。
 表構えは軒高が低く、二階両脇に「袖卯建(ソデウダツ)」と呼ばれる袖壁を揃え、窓には古格子が付く。一階には庇下にサガリを設け、開口部には蔀戸が入る。
また「簾虫籠(スムシコ)」と呼ばれるこの地方特有の格子も復原されている。
屋根は瓦葺であるが、小屋根には石置き屋根当時の小屋根の遺構も残されている。
 この建物は江戸時代後期の町家の古い意匠と構造を示す希少な遺構として極めて貴重な建造物である。
                                 金沢市

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二階部分の格子。格子の下の細工が美しい。
金沢では二階部分にこのような格子を設けた商家をよく目にします。

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夏に訪れたときの写真。表構えの蔀戸を開けて庇下部分に格納しています。
「蔀戸」とは通りに面した柱と柱の間に入れた板戸で、昼は上部に格納します。
蔀戸の下にある桟が「簾虫籠(スムシコ)」。木の竪桟に、細い竹の横桟を配しています。
「サガリ」は、一階庇の下の横板で、雨風が直接当たらないように取り付けられています。
二階両端に張り出した壁が「袖卯建」です。

(訂正・追加)
UPした後で、↑の「簾虫籠」についての説明が間違っていたのに気がつきました。
簾虫籠は蔀戸より写真手前側のサガリ下にある、細くて黒っぽい格子のほうです。
ゴメンナサイ!

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店内の様子。ミセノマといいます。

このお店があるのは大工町という町名からして大工さん・職人さんが住んでいたとおぼしきエリア。繁華街の横の細い路地に、表構えの一階にキムシコと呼ばれる加賀格子を設けた古い住宅型町家と飲み屋の雑居ビルが混在しているようなところです。
今でこそ繁華街の谷間にひっそりと息づいているようなこの路地は、私が訪れた夏・冬いずれも格子のような雨が降っていて、吉田健一が北京の胡同に見立てて雨の中さまよった「金沢」の面影をかろうじて残しているように感じられました。