代々木果迢会別会(2)

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今回は満席の盛況で、休憩時間のたびに大変でした。オニギリも能楽堂の外で食べたし・・・。
卒塔婆小町のあとは真高さんの独吟・・・の予定でしたが、体調不良とのことで休演(T T)

「恋重荷」
美しい女御の姿をひとめ「見て」、かなわぬ恋に落ちた菊守の老人・山科の荘司。荘司の懊悩が宮中の噂になって、女御は「この重荷を持って庭を百度も千度も回れたら、もう一度姿を見せてあげる」と『恋の重荷』を課す。驚き戸惑いながらも荷に手を掛ける荘司。しかしそれは、美しい綾に包まれた巌だった・・・。

山科の荘司(シテ)は、老人というより まだとても若い感じ。もともとほっそりした立ち姿の方で、尉の面も、庭仕事に従事する老いた肉体労働者にしては優がたな顔だちだったのが、シテの雰囲気に合っていたと思う。
荘司は 細分化された下働きの組織のなかで普段は菊だけを相手にしているのだろうか、思いがけず延臣(ワキ)に呼び出された彼は警戒心をみせていたのに、女御さまの話が出たとたん、若々しい声になっちゃうところが結構リアルだ。「お前は女御様に恋をしているとは本当か?」と聞かれて「なんでそんなこと知ってるんですか」と正直に認めてしまう、無防備なまでの一途さが、このあと彼を破滅に招くのですが・・・。

シテの小早川さんは全体を通して声を高めに張っていて、ジェラール・スゼーの歌う「月の光」でも聴いているみたいというか、その意味では全然「老人っぽい」感じではなかったのだけど、生涯にただ一度の恋が、つましくも平穏な日々を送ってきた荘司の生命の火を一気に燃え上がらせたのだろうか。
美しい綾に包まれた重荷は、かなわぬ恋の象徴でもあるし、美しい姿の裏で男の心を残忍にもてあそぶ女御にも重なるようでもある。
重荷の中身=女御の本心を知った男は、絶望と怒りのあまり「思ひ知らせ申さん」と鋭い足取りで橋掛かりを掛け去って(命を絶って)しまうのです。この前場は、老人ということもあってか動きは少なめな分、シテ謡が肝らしいのだけど、恋に懊悩する生身の男といった感じが出ていて、前場のほうが面白かった。

女御(ツレ)は女性能楽師で、ひんやり艶やかな美女。ワキの工藤さんに「あなたのしたことの結果(荘司の死骸)を御覧ください」と言われて庭に下り、さすがに少し悔やんでいるところを金縛りにあってしまいます。
後シテは、女御をいためつけて思い知らせてやる!というよりは、思いつめた末に自分の思いを訴えに現れたといった趣。逆ギレして女御を杖で突いたり肩に重荷を載せたり、みたいなミットモナイことはしてなかったけど、訴えるだけの方が、死んでも身分違いの壁を乗り越えられない哀しさが出ているように感じました。若く、内向して思いつめるような荘司だったのが、このシテらしかったかも。

終演後、シードルとクレープでおなかも甘~く満足させた一日でした。