雨と子犬

 
最近、昔のCMを動画で観ているのですが、雨の日は、やはりこれ。
雨の京都の町を子犬がどこまでも歩いていく、サントリーのCM。
 
黄昏色より濃く、重い色合いの空。
お寺の石段をおぼつかない足取りで駆け下りてくる。
信号待ちの雑踏。
木の下の雨やどり。
雨の石橋を心細げに渡る。
夜の雨に濡れた、町家の軒並み。
 
もう30年近く昔のCMで、カンヌ国際広告祭で金賞を受賞した作品だそうですが、
偶然、図書館であの子犬の「その後」を取り上げた本を見つけました。
(「名優犬トリス-お母さん、ボクをおぼえていますか-」山田三千代著・ハート出版)
 
著者はCM収録後に子犬を引き取った人の家族で、この本によると
子犬(トリス)はセントバーナードと柴犬の雑種で、保健所で殺処分直前だったのを
制作スタッフに見出され、あのCMに採用されたのだそうです。
収録後も引き取り手がつかず、撮影所で「一時預かり」のまま飼われていたのを
見るに見かねた著者の父親がもらってきたのだとか。
その後CMが放映されて、トリスはサントリーの祝賀会やテレビ局の取材で有名に。
私、サントリーの社員にもらわれていったと聞いたので、結構ショックな内容でした。
 
CMそのものも、トリスのエピソードも、時代背景がすごく現れてる気がしますが、
今の日本人にこそ必要なものが、このCMには流れている気がする。