喜多流 素謡・仕舞の会
仕舞
氷室 金子 敬一郎
敦盛 内田 成信
シテ 谷 大作
ワキ 粟谷 充雄
地頭 粟谷 能夫
仕舞
班女 粟谷 能夫
融 塩津 哲生
東北
シテ 佐々木 宗生
ワキ 狩野 了一
ワキツレ 佐々木 多門
地頭 友枝 昭世
パンフレットによると、この日の会は「十四世喜多六平太能楽堂改修勧進」、つまり会の収益をすべて能楽堂の改修に充てるのだそうです。平日の夕方6時からの開演にもかかわらず、小ぶりな見所はほぼ満員の盛況で、マーカーでみっちり書き込みをした謡本持参の方が目につきます。やはり社中参加率が高めで、みんな楽しみにしてました♪という感じでアットホームな雰囲気です。
私は素謡も仕舞も好きで、去年は国立の「素の魅力」を玄祥・乾之助のシテで観に行ったのだけど喜多は初めてだったので、見所にただよう期待感にもワクワク。
仕舞はこの季節にぴったりな番組で、「氷室」は 氷の作り物のかわりに銀地に白い雪輪文様を描いた扇を使っていたのが、目にも涼しげ。私の好みでは能も扇でいいかも。というか、仕舞のほうが「氷室」はすっきりして見えるような気がします。
「融」の塩津さんはきなりに近いベージュの紋付姿で、残暑でうだるような夏の宵に、初秋の風がほのかに感じられるような、すこし渋めな冷え寂びた感じでした。
喜多流の素謡は目付柱に向かって斜めに着座するところは宝生流と同じだけど、面白いのはシテが後列端に座ること(ワキは前列)。しかも「花月」では向かって後列左端、「東北」では後列右端とシテの配置も違っていたし。う~ん、シテは謡いづらくないのかなあ?
「花月」も「東北」も詞章の事前入手はしていなかったのだけど、喜多の謡は滑舌が明瞭で聴き取りやすいので、鑑賞にはまったく問題ナシ。
「東北」は、能では何度か観ていたけれど、謡をしっかり聴けたのは初めて。素謡は面や装束、舞がない分、謡に集中できて、ワキ二人を若手がつとめ、後列に人間国宝&重鎮をそろえた布陣は櫛の歯のようにびしっと揃った謡で聴きごたえがありました。
能の詞章って一応ストーリーはあるのものの、掛詞などの修辞技巧を駆使しているので、ある言葉から「音(おん)」と「意味」が連想ゲームのように次の言葉を引き出し、また次の言葉に引き継がれていく・・・というような展開をしていて、つる草がどこまでも伸びて、伸びた先から次々と美しい花を咲かせていくような。ワキの謡をワキツレが引き継ぎ、二人の謡がひとつになって、そこにシテが加わり、やがて地謡が入る・・・という展開も、それぞれ色も太さも違う糸がより合わされて次第に一本の糸になっていくのを耳で見ているような感覚があって楽しかったです。
<本日のオマケ>
この曲では 私のお目当て♪も出ていたのだけど、春に「野守」のシテをつとめたワキツレも なかなかよかったです。少しくせのある声質ながら やわらかく清潔感のある謡。ワキ(←お目当て)との息もぴったりで、「若く、清げなる僧二人」という感じ。切戸口に立つときの後ろ姿もキレイ
・・・などなど、素謡とか仕舞ってこういう楽しみもあるんだよね~♪とも思ったことでした(^◇^;)