神保町・昭和のまち

イメージ 1
 
書庫に「酒肴酒」も追加して、このブログもいよいよオッサンじみてきたような。。
 
最近でこそ状況が少し変わってきているようだけど、基本的に神保町の古本屋は
日曜休日のところが多い。
学生街とはいえ、昔に比べたら学生の学力&読書量の低下も進んでいるし、
どっちかというと社会人の方が書店の利用率は高いのではないかと思うのだけど、
こうして写真を撮ってみると、古本屋のワゴンセールに群がっているのは
若くて50代以上で、どう見たってシルバー世代が圧倒的多勢である。
どうりで、やまねこのブログに同世代の本好きが来ないわけだナ~(寂し~っ)。
 
イメージ 2
 
こういう店構えの古本屋は、一歩足を踏み入れると分厚い全集がお出迎え。
あと浮世絵とか江戸時代の冊子専門の古書店もあったりする。
やまねこは、どっちかというと美術、演劇、建築系の小規模な専門店が好き。
新刊書店も三省堂本店、書泉グランデ東京堂とそれぞれカラーが違っていて、
学生時代「東京堂に行けば大抵の本は見つかる」と言われて以来の東京堂派。
きょう久しぶりに行ってみたら、全体的にシックな色調に改装されていて
各フロアにカフェまでできていたのにびっくり。
正直いって、カフェなんか すずらん通りだけでも沢山あるんだから、そこで面積つぶさなくても~と思うけどね。
 
イメージ 3
 
靖国通りすずらん通りがメインストリートなら、路地裏にはこんなお店も。。
左奥の「ミロンガ」は、その昔、2階が出版社で1階がバーだったのだそうで、
若き日の武田百合子が編集者志望で応募するも1階のホステスとして採用されて、
そこで武田泰淳と出会ったのだそう。
当時はもっと薄暗い路地だったのだろうけど、泰淳と店を出た百合子さんが
あの情熱的な大きな目で、じっと泰淳を見上げた場所かしらん・・・と想像してしまう。
手前の「ラドリオ」は、戦後は大学教授や作家、編集者がたむろする店だったとか。
 
きょうあたしはラドリオでMと会いました。Mとおなじように髪の長い――ただそれは砂漠色に脱色されていました――娘がいてMに話しかけてきました。少しおかしな日本語で、混血児ではないかとおもいましたが、たしかなことはわかりません。(中略)Mとその娘はコーヒーとレモネードを交換して飲みながらゴダールの最新作についてしゃべり、それから来月やってくるエラ・フィッツジェラルド(音楽家らしい?)の切符のことなど話しあっていました。
倉橋由美子「聖少女」)
 
 「聖少女」が書かれたのは昭和40年。茶髪金髪のヘンな日本語しゃべる女子大生は平成の世にもわんさかいるけれど、レモネードとかゴダールってアイテムに時代を感じさせますね~。やまねこも一度だけラドリオに入ったことがあるけど、昭和らしくテーブル小さめ&タバコもうもうもう!なお店。ウィンナコーヒーも、なんかコーヒー専門店で出されるのとは違う、独特の「『あの時代』に憧れたウィンナコーヒー」だった、のかもしれない。
 そう気がつくと、土日には行列ができる「さぼうる」も、「伯剌西爾珈琲」「古瀬戸」も、今はなき昭和の喫茶店文化の残り香が立ちこめる非日常の空間なのであった。
 神保町は学生街、オフィス街でもあるので、行くたびにスタバやドトール、上島珈琲、サンマルクカフェなどのチェーンショップが増殖しているし、東京堂のようにカフェにも色気を出す書店も今後増えていくだろう。それでもこうした昭和の喫茶店は健在でしょう。定年を迎えた団塊世代はもちろん、震災後の「昭和復刻ブーム」に乗っかった若い世代も当面は新鮮がってくるだろうから。
 かくいう私も、自分が影もカタチもなかったはずの時代の「老舗系」「レトロ系」に、とっぷりハマって昭和臭をぷんぷん漂わせているのだった。いや~~ん。