横浜美術館「マックス・エルンスト  フィギュア&スケープ」

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マックス・エルンスト「少女が見た湖の夢」(横浜美術館所蔵)
 
もう二週間ほど前にすべりこみセーフで観に行けた東博の「ボストン美術館展」の記事も書けていないのですが、梅雨の晴れ間の午後、みなとみらいの横浜美術館まで「マックス・エルンスト フィギュア&スケープ」展を観に行ってきました。
 
マックス・エルンストといえば、鳥人間みたいな奇っ怪な化け物の絵を描いている
ヘンな画家、くらいのイメージしかありませんでしたが、去年、横浜トリエンナーレ
会場となった横浜美術館のコレクションとして紹介されていた「少女が見た湖の夢」が印象に残り、ちょっと興味を抱きました。
上の画をよく観ると、湖(というより沼みたいですが)の周りの木々とも奇岩ともつかない「かたち」の中に、人の顔や動物が潜んでいて、それが途切れることなく環状に、黒い、さざ波ひとつたたない湖をびっしりと取り囲んでいる。――疲れがたまった休日の未明に、奇妙に現実の入り混じった夢を断続的に見ている時の気分にも似た、目覚めてからもしばらくは夢の尻尾をひきずっているようなときって、こんな感じかも。。
 
 
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マックス・エルンスト「自由の賞賛」(横浜美術館所蔵)
 
会場には有名な「百頭女」の書籍も展示してあったけど、二種類以上のフロッタージュをコラージュした「彼女は約束を守る」や、腐食した化石のような夜の森など、直線的で鉱物的なイメージの作品に惹きこまれました。どことなく、野中ユリの銅版画に似ているような・・・。作品の吸引力に比べ、キャプションの難解さには閉口させられたので、途中からは割り切って作品の「フィギュア&スケープ」のみ鑑賞することにしました。
会期終了前にしてはそれほど混んでいなかったのですが、一人で観に来ている若い男性が結構多かった気がします。同じ横浜美術館で年明けに開催された松井冬子展の客層とは正反対。マックス・エルンストの硬質な作風は男性の方に受けるのでしょうか。
年表によると、マックス・エルンストの二番目の妻は、あのポロックを見出したペギー・グッゲンハイムだったのですね(彼女にとっては三度目の結婚)。
う~ん、やまねこに巨万の富と審美眼と鋼鉄の神経(←ここ重要)があったら、才能あるイイ男を娶って傑作を・・・って妄想しながら最後の展示コーナーに足を踏み入れたところで、鳥人間(ロプロプ)のフィギュアが目に入ってきて現実に引き戻されてしまいました(笑)。
 
 
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ルネ・マルグリット「青春の泉」(横浜美術館所蔵)
 
入館した時間が遅めだったので、コレクション展はサックリ観ただけでしたが、
横浜美術館シュールレアリストのコレクション、ルネ・マルグリット「青春の泉」や
ポール・デルヴォー「階段」も、私の長くだるい夢に出てきそうな作品です。
横浜美術館は吹き抜けのホールを二階の回廊から見下ろす構造になっており、
回廊をそぞろ歩きしながら展示室を巡るというスタイルなのが、
なんだかムソルグスキーの「展覧会の絵」のプロムナードのようです。
金沢21美しかり、松涛しかり、どうやら私は円形の美術館建築が好きらしい。
そのときの気分や展示作品によって、思索したり、自分を空っぽにしたりしながら
ぐるぐる歩き回るのが性分に合っているのかもしれません。
 
帰りは、赤レンガ~大桟橋~山下公園~中華街をのんびりお散歩。
横浜は海で空が開けているせいか、東京より空の色が明るくて好き。
忙しい時、横浜の街を歩くだけで、ちょっとした旅をしてきたような気分になれます。