光の壁

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(午睡)
 
3年前まで、実家での夏のお昼寝場所は廊下でした。
座布団を枕代わりに、風通しのいい場所でそのままウトウトするだけ。
廊下の壁には漆喰を使っていたのですが、漆喰は適度にひんやりとやわらかい手ざわりで、寝返りを打って素肌が触れると、とても気持ちよかった。
 
以前ワタリウム美術館で見たルイス・バラガン邸の復元模型では、やや粗めに漆喰を塗って室内の光をやわらげていましたが、漆喰はまっすぐ均一に塗っても特有の凹凸ができるのか、写真のように、平面の壁に微妙な陰影が生まれ、光がやわらかく揺らぎます。
 
フェルメールの作品を実際に目にした時、光を室内でやわらかく受け入れる「壁」の持つ効果を、漆喰の壁にふれて育った経験から、すこしは体感することができたのかもしれません。
 
8年前の震災で、我が家は建て直しこそしなかったものの、屋根瓦が落ち、大谷石の塀が倒壊し、家のあちこちに歪みが生じ、漆喰の壁はかなりの部分が崩れて、歩くたびにスリッパの裏で灰色の土がジャリジャリしました。
本当は漆喰を塗り直したかったのですが、諸般の事情で改修後クロス張りに。
改修後、ワンコは廊下で眠るときに、壁に頭や肉球をくっつけなくなりました。
 
昔ながらの土や木で作った家は、維持にものすごくコストがかかるし被災のリスクもあります。
だけど、お昼寝には必ず木材が使われている床やドアの前を選ぶワンコを見ていると、やっぱり、人も犬も、土から離れて生きることはできないんだなあ~と、「天空の城ラピュタ」みたいなことを考える やまねこでした。