コルトーのシャブリエ「牧歌」

 先日の記事「雨の名前」のコメント欄で、常連さんの雪割小桜さんと「雨の日といえばこの曲」というコメントを楽しませていただきましたが、その中で やまねこは
「アルフレッド・コルトーの弾く、シャブリエの『牧歌』がいい」
と書いておりました。でも動画が見つからないんですよね~、と。
 
それが、ひょっこり出てきたのですよ~~!うれし~~
 
エマニュエル・シャブリエ「絵画的小曲集」より「牧歌」
 
 印象派の絵画を思わせるこの作品は、やっぱりフランス人ピアニスト、それも19世紀の残り香を漂わせるアルフレッド・コルトー(1877-1862)でなくちゃ!と思います。
 フランソワやハイドシェックの恩師の一人であったコルトーも、わりとテンポが揺れるしミスタッチもなんのその~な弾き方をしているけど、20世紀的正確無比なピアニストの演奏にはない「香り」を感じさせるピアニストです。1929年の録音ということは、もう80年以上昔の音なんですねえ。
 この演奏を聴くといつも、夕方の薄黄色くほの暗い雨空から、銀の櫛の歯のような雨が絶え間なく降ってくる情景が浮かんできて、いっけん規則的な雨脚に濃淡が感じられるような端正なタッチが好きなのです。十数年ぶりに聴いてみると、モノラル録音ならではの音の「距離感」が、内田百閒の「サラサーテの盤」じゃないけど、なにやら別の世界から聴こえてくるようにも感じられるというか・・・。現代の演奏家よりすこし遅めなテンポも「牧歌」らしくて好きな演奏です。