故小早川泰士二十三回忌追善能(その2)

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(代々木能舞台
 
 追善能ともなると、仕舞やら舞囃子がたっくさん入るので、仕舞ウォッチング大好き!な やまねことしては、それも楽しみのひとつ。・・・ですが、この日は久しぶりの長時間の観能で、さすがに芥川の「芋粥」な気分 特に印象に残ったのは家元の舞囃子「松風」でしょうか。写真で見るより知的で端正な雰囲気の方で、舞も品よく且つテンション高め。
 今年米寿を迎えられる浅見真高さんは、おそらく故人と愛弟子のために、この日まで体調を万全に整えて出てこられたのでしょう。代々木より長い松濤の橋掛かりをゆっくり進んでこられて、故人に縁のある曲らしい「放下僧」を、ご子息の滋一さんが見守る中鬘桶に掛けて謡われていました。
 
 
「石橋」
 この春芸大を卒業した小早川さんのご長男・泰輝くんの「石橋」。ここ数年、水道橋や青山の銕仙会研修所で、紺のスーツやジャケットをきちっと着て見所の一隅で舞台を観ている泰輝くんの姿を見かけることが多かったせいか、気分はもうすっかり遠縁のオバ・・・おねーさん。
 泰輝くんの舞台は、一昨年「高砂」を観ているのですが、あれからわずか一年余りで型もしっかりした感じになり、相当な稽古を積んでいるのがうかがわれました。前場童子はさすがに緊張気味だったけど、ブレることなく長い詞章を謡っていく。
 後場でお幕が勢いよく上がって若獅子が橋掛かりに躍り出てきたときは、一陣の爽やかな風がさーっと駆け抜けていったよう・・・そして後見の浅見真州たちもシテが舞台に入るとほぼ同時に後見座に摺り足ダッシュで滑り込み、ぴたっ!と着座。
 「石橋」って同じお流儀でもいろんなバージョンがあるようで、銕仙会で半能による「石橋」の披きを観たこともあるのですが、この舞台はそれほど大きく反り返らなかった分、跳躍が多かったような。宝生流のように、いかにも獣っぽく枝に足をかけてぐるーっと見渡すようなこともなく、比較的シンプルなスタイルだったように思いますが、逆にいえば体が安定していないと即バレちゃうのではないでしょうか。
泰輝くんは稽古の積み重ねでもう体が自然に動くのか、跳躍の連続にも体の軸がしっかりしている感じ。180cmを優に超す長身が一畳台の上を跳ね回るから迫力があって、若者らしい気魄と初々しさを感じる若獅子でした。
 
 パンフレットによれば、彼はひいおじいさんが亡くなる少し前に生まれたのだそうで、23回忌にこういう清新な舞台を披くことこそ、まさに「追善」ですね。自分の選んだ道をまっすぐに進んで、お父様のようなすばらしい能楽師になってほしいです。
・・・って、上から目線(?)のやまねこも、この日の「石橋」には そろそろ忘れかけてた(汗)爽やかな気分を思い出させてもらったのでした。