2013夏の九州旅行 ⑥一人で行ってはいけません-細川刑部邸
このところ週末限定更新の九州旅行記、ようやく熊本城を出たばかり(汗)。
熊本城には休憩所がほとんどないので、隣接する県立熊本美術館のカフェへ。
小ぶりで落ち着ける感じの建物、職員のオジサマもスマートで親切。
熊本は城下町だから、お城の周りに文化施設が集中しているのは金沢に似てる。
文化色を全面に出してる近年の金沢と比べれば、熊本の方が大らかな感じだけど。
ひと息ついて、細川刑部(ぎょうぶ)邸へ。
細川家3代目当主忠利の弟・刑部少輔興孝が正保3年(1646年)に2万5千石を与えられ興した、全国有数の上級武家屋敷というだけあって、門からのアプローチが長い長い!ゆうに3分は歩いたでしょうか。
猛暑からひと息ついた青楓。
ようやく蔵がついた長屋門に。門衛がいそうな小部屋が受付になっていました。
こういう廊下いいな。
・・・と思っていたら突然外が青白く光り、激しい雷の音が!
辺りは薄鼠色の幕を引いたように薄暗くなり、聴えるのは雷鳴と激しい雨音だけ。
・・・え?
さっき入れ違いに団体客が出た後は誰も来てないから、
もしかして、今、この広いお屋敷にいるのは、
・・・やまねこ、だけ?
女はしじまのなかに、鈴がチリチリとひびく音を聞いた。
鈴の音?
こんな時間に、武家屋敷の町を、いったい何の巡礼が通るのだろうか。
しばらく間をおいて、鈴の音は、今度は、はるかに大きく聞こえた。明らかに巡礼はこの家に近づいている。だがどうして家の後方から近づくのか、後には道はないはずなのに・・・。
鈴は、たしかに庭で、チリチリと鳴っている。花嫁は、下男を起こそうとした。しかし、起きあがることができない――そして、ますます鈴の音は近づいてくる。
そのとき、そっと影がすべりこむように、ひとりの女が部屋に入った。
戸という戸は固く閉ざされ、ふすまは微動だにしないのに、経帷子を着て巡礼の鈴をもった女が入った。死後時がたち、眼はうつろになっている。髪はほどけて顔にかかり、もつれた髪ごしに、眼のない眼、舌のない口が、ものを言った。
「おまえをいさせるものか、この家にいさせるものか。私はまだこの家の女主人。出て行け。」
ンギャ~~~~~!!!
長~い前庭を超ダッシュで突っ走り、通りかかったタクシーに飛び乗るやまねこ。
教訓。武家屋敷には、朝早い時間に行きましょう。
※出典:小泉八雲「破られた約束」(池田美紀子訳)