林檎の灰から

 共働きの我が家で頻度の高いメニュー、丼もの。
 ガパオライス、親子丼、マグロ&とろろ丼、豚キムチ丼、カツオのたたき丼(バルサミコにんにく醤油をかけたの)、その他冷蔵庫の在庫丼(笑)…。
 職場で神経を使い果たした日なんて、「あるもの」を適当に合わせた丼に味噌汁がやっとだったりする。だから、余力のある時に肉・ネギ類・各種缶詰etcをまとめ買い。
 私一人なら「納豆卵かけごはん」だけで充分だけど、帰宅の遅い夫にそれではかわいそう。味噌汁があるだけで「家庭の料理」になるし、たとえテキトー丼でも外食より体がほっとするから少しはマシかも…と思うことにしている。

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 そんな食卓だからこそ、せめてうつわくらいはゆったりした気分で楽しみたくて、時間をかけて探し出した「丼」がこれ。
 盛岡の作家さんの手による花形鉢は、素朴さと繊細さがしっくり調和していて、鉢の底の釉薬が遠い北の湖のように美しい。お店の方によると、林檎の樹を燃やした灰を釉薬に使っているのだという。
 炊きたてのつややかなごはんの下から澄んだ翡翠色の湖水が現れる瞬間は、いつ見てもうっとりしてしまう。

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 色違いの灰釉。「青い木蓮」のイメージ。

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 ちょうど私の両手にすっぽり収まる大きさ。土肌もやさしい手ざわりで、うつわとの出会いは本当に縁だと思う。
 このうつわは都内のお店で買ったけれど、盛岡は私にとってのうつわヒット率が高い。新居に入る前に都内のデパートやギャラリーを探し回っても見つからなかった汁椀は、光原社で安比塗のお椀を手に取った瞬間即決だった。「これだ!」というつわは、すっと掌に吸いついてくるような感覚がある。
 やはり私のDNAが北国に惹かれるのかもしれない。