「普通の服をはっとするほどキレイに着る」(佐藤治子著)

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 本書は、英国ブランド「イェーガー」「アクアスキュータム」などのアパレルブランドのデザイナーによる、ベストセラー本。著者はなんと今年70歳(父と同級生!!)の大御所。表紙の若々しさに二度ビックリ。
 近年、人気スタイリストやファッション誌編集者による「服を紹介する側」からのコーディネート本が星の数ほど刊行されている。「服を作る側」から発信された本書はそれらの本とは異なる切り口で、アラフォー以上の世代に向けて【服をキレイに着るコツ】を提案する。

 20代、30代で流行のファッションを楽しんできた女性がアラフォーになって直面するのは、「オフィシャルな場に合った『普通の服』が見つからない」という現実。
 見た目は30代の体型とツヤツヤの髪を維持していても、年齢の波は二の腕やヒップライン、膝の上などの微妙なパーツに現れる。アラフォー対象の雑誌を見ても、どれもこれも「こなれた(ゆるい)」服装ばかり。30代前半までなら若さでまぁ着こなせてしまう流行のガウチョやロングカーディガンや大き目のシャツは、アラフォーが職場で着るとなんとなくだらしない。  
 ゆるいファッションのアラフォーは、はっきりいって「ちゃんと仕事を任されている人」には見えないのだ。そこで外回りの営業時代にお世話になったブランドで試着したら、明らかに若い人向けのパターンで、腕を上げたら違和感が…といった経験はないだろうか?

 20代、30代を通り過ぎて実感するのは、今の30代はたとえ既婚でもまだ「お嬢さん」な服装ができる程度に若い。その分、年齢を重ねている実感が低いままでいると、次のステップに進む年齢になって自分に合った服がわからなくなる、ということだ。

 著者はここ数年の、TPOや着る人の体型を無視したオーバーサイズ気味の「ゆるいファッション」へのアンチテーゼとして、さまよえる40代以上に向けて執筆したのだという。
 mature(成熟)してない現代の日本人女性が本当に「大人の女性」になるのは40代以降だという。今まで流行のファッションを楽しんできたその年代の女性にとって、おしゃれの基本はサイズ感、「ジャストサイズ」だと著者は言いきる。時代に合ったサイズ感と自分の体型のバランスがおしゃれのポイントなのだそうだ。
 以下サイズ選びの基本知識や各パーツのサイズ選びのポイントなどをわかりやすく紹介されているのが本書の真骨頂で、サイズの章だけで元が取れる気がする。ジャケット丈のバランスとか、カフスの長さはジャケットの袖から1センチ出る程度といったポイントは、紳士服なら基本知識だけど、婦人服では意外と知られていないのが実情だ。
 とにかくサイズ表示だけで判断せず、実際に「試着しまくり」がおしゃれになる王道だそうだ。この本を読んでから、私の試着時間は倍増(笑)。ジャケットのインナー用にノーカラーブラウスを買った時は、実際に合わせるジャケットも着ていったし、かがんだ時の胸元の開き具合までチェックするようになった。

 後半の著者定番アイテムは参考程度。私は自分の経済力・伴侶とのバランス・職場環境などを考慮して、自分なりの「白いごはん=定番」を築くという現実路線を模索中。著者なら「ロジェ・ヴィヴィエの靴」となるところを、私は「銀座かねまつの靴」といった具合。

 本書は売れに売れて、近日中に著者自身のコーディネートを紹介した3冊目が上梓予定とのこと。正直、アラフォーには世代差があるのでは?と感じるが、一年足らずで3匹目のドジョウをリリースできるのは、この世代のファッション市場が実はブルーオーシャンだからだろう。本書は、成功したければみんなと同じマーケットで勝負しない、というマーケット戦略のお手本でもあるのかもしれない。

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