コンプリート!漱石限定カバー(2016版)

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 今年2月9日に生誕150年を迎えた夏目漱石(1967-1916)。
昨年2016年は没後100年にあたるので、2年連続の漱石year。

 写真は昨年暮れに新潮文庫から出た限定版の特別カバー。
漱石の作品の中でもコンスタントに売れている『坊ちゃん』『草枕』『三四郎』『それから』『門』『こころ』の6作品の表紙は、カラフルなジャケット姿の漱石ポートレート。カラー戦隊・漱石か?!(笑)
 プレミアに弱い私、ゼミの恩師・石原千秋先生が新潮文庫版を著書に引用されていることもあって、コンプリートしよう!と思い立ったのが今年6月。限定カバー6冊中5冊まではスムーズに買えたものの、一番売れているはずの『こころ』だけがなぜかどこにも置いていない?!
 ジュンク堂から新潮社に問い合わせてもらったところ、このカバーは2月9日(漱石のお誕生日)までのキャンペーン限定で、出版社の在庫は2017年夏版プレミアムカバーに差し替えられているとのこと。

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 こちらが2017年夏フェアのプレミアムカバー。
これはこれでおしゃれな気もするけど…せっかくなら「赤レンジャー隊員・『こころ』」の方が存在感あるんじゃない?
 出版社からすれば、新潮文庫版『こころ』は文庫本の中でも史上最高の売上部数718万部を誇る、超超ロング&ベストセラー。没後100年、生誕150年とそれぞれプレミアカバーを出せばコレクション買いも見込めるのだろう。
 とはいえ私にしてみれば、キャンペーンをうっかり見逃していたとはいえ、よりによって『こころ』だけ欠けているセットは中途半端。あとは店頭在庫の残りかブックオフに流れてくるのを待つしかないかな…と半ば諦めモードでした。

 そんな夏の日(今日)、仕事で有楽町に出かけていた夫から「じゃじゃーーん!『こころ』(あの表紙)見つけたよ♪」
というメールが!!
 夫も書店には目がなくて、池袋に新しくできた丸善&カフェをさっそくチェックしたりしているのですが、三省堂の文庫コーナーで平積みになっている2017夏バージョンの下から、赤レンジャー漱石を発見・確保してくれたのだそうです。
 長岡に帰省した際に、地元の書店をハシゴしても置いていなかった時点で諦めモードになっていた私と違って、夫は出先で書店を見かけるたびに赤レンジャー『こころ』を根気強く探してくれていたのです。ありがとう~~~(涙)。

 ところで、各社から刊行されている漱石作品、違うのは表紙だけではありません。私の学生時代は、岩波文庫版を引用に使っていたけれど、石原千秋の「漱石と日本の近代(上)」(新潮選書)によると、岩波文庫版は原稿に内容をそのまま使用しており、単行本化する際に漱石が新聞連載時の本文に手を加えたところさえ反映していないという問題があるのだそう。
(先生そんなこと早く言ってくださいよ~~!)
 つまり、岩波文庫版は当時の(単行本の)読者が読んだ本文ではないのだ。それならいっそのこと広く普及している新潮文庫版を使用した方がいい、新潮文庫は漢字表記をもっとも多く残していて当時のテイストが感じられるし、という理由で新潮文庫版を引用しているのだとか。(まあ、新潮選書でこんなこと書いていれば世話ないやって気もしますけどネ)

 というわけで、この夏は早起きして通勤車内&コーヒーショップで漱石を読む「朝活」に取り組んでいます。朝の方が集中して読めるし、漱石の仕掛けた「たくらみ」を見つけやすい気がします。ちょうど『彼岸過迄』を読み終わったところ。   
 はっきりいって漱石は学生の頃より、『こころ』の「先生」の年齢に近い今の方が破格に面白い。『三四郎』『それから』『門』の前期三部作を追うだけでも、漱石が新聞連載という制約の中で、いかに新聞という当時最新のメディアを意識し、その中でテストパイロットのように実験し続けてきたのかが窺えます。100年前にはあまりに実験的だったであろう作風で、漱石が当時の文壇から孤立していたというのも無理はないと思います。
 高校の現代文で『こころ』読んで漱石体験終了、じゃ本当にもったいない。やはり漱石近代文学の頂点に立つ作家だなあと思います。