冬の定番

 
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 かの向田邦子のエッセイに「手袋を探す」という一篇がある。
 二十二歳の向田さんが、気に入った手袋がなかなか見つからず、かといって手頃もので妥協はできず、真冬でも手袋なしで過ごしたというエピソードだ。そんな彼女に当時の上司がこう諭す。君のやっていることは手袋のことだけじゃないかもしれない。男ならいい、でも女はいけない。そんなことでは女の幸せを取り逃がすよ。
 若き彼女はその言葉にはっとして、自分の高望みの性格に向かい合う。そして、ならばその嫌なところととことんつき合おう、ここで妥協して手頃な手袋で我慢をしたところで、結局は気に入らなければはめないのだ、という結論に至った、という。
 
 
 高校生の頃に読んだエッセイ集「夜中の薔薇」の中でも、その一篇が特に印象に残ったところをみると、すくなからず共感できる部分があったのだろう。
 幸か不幸か、向田邦子のような「『本物』志向」を持とうにも、先立つものがない私の場合(笑)は、すくなくとも手袋については探しあぐねたことはない。身に着けるものはたいてい国内の大手アパレルか手頃なインポート。最大公約数の中から、自分の年齢相応の品質で、かつ惜しみなく着倒せるものをという基準で、無難に選んでいるからだと思う。
 
 
 写真の手袋は今期で2代目のリピート買い。
 ひとたびラムレザーの肌に吸いつくような感触と温かさを知ってしまうと、もう、「毛糸の手袋」には戻れないわ(笑)。しかも裏地は目の詰まったカシミアなので、日本海側の地方都市への帰省や旅行でも問題なし。
 そして、なによりやや長めの筒が手首でシェイプされているのがGood job!見た目がエレガントなだけでなく、防寒対策もばっちり。こういう機能美を備えた、しかもお手頃な品を見つけると、もう小躍りしたくなっちゃいますね。
 
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 ごらんのようにコートの袖口でもたつかず、寒気をシャットアウトできるのです。
特にファーなどの飾りがついていなくても、袖口から華奢な手首がチラッとのぞく方が女性らしいと思うのは私だけ?
 この冬は大物(コート)を買わない代わり、コーディネートの幅を広げてくれるレザー手袋やピュアカシミアのストールに投資してみた。冬のお洒落は年単位で少しずつ揃えていくというのも、ひとつの楽しみ方かもしれない。