「都市へ仕掛ける建築 ディーナー&ディーナーの試み」

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東京オペラシティといえば、コンサートホール「タケミツ・メモリアル」のイメージが強いせいか、
つい最近まで現代アートのギャラリーがあるとは知りませんでした。
なにげなくクリックした企画展サイトのコピーに惹かれて、初台へ。


スイス・バーゼルを拠点にヨーロッパ各地でプロジェクトを展開するディーナー&ディーナー(D&D)は、父マルクス・ディーナー(1918-1999)の事務所を息子ロジェ・ディーナー(1950ー)が引き継ぎ、主宰している設計事務所です。新築・改築を問わず、建築は現存する都市の一部にならなければならないと考えるD&Dの作品は、建築家自身のスタイルを商標登録のように掲げた個性の強い建築とは際立った対照を見せます。周辺環境を丹念に分析しながら設計される建築は、都市になじんで一見匿名的です。それぞれの状況に意図的に埋もれるように建つその建築は、都市の記憶をたぐり、その現在の活動を読み、人びとが建築と都市の関係に新しい意味を発見することに手を貸す存在となるべく、都市に対して内部から微妙なパルス(振動)を発生させています。(展示会パンフレットより引用)


建築を切り口にした企画展というと、建築家のスタイルを前面に出したものを連想します。
たとえば、誰が見ても「これは安藤忠雄だ」とわかるような。
D&D」では、建築は都市の時間・空間の連続につらなるものであり、都市の一部でなければいけないというコンセプトにもとづいて作られたもの。
前述のような「強い」建築とは真逆のアプローチをしているんですね。

正直いって、建築関係の人以外には、ちょっと難しい企画展だと思います。
特に木製の都市模型は、D&Dの作品がいかに周辺の環境とひとつになっているかあらわすため、都市全体を同じ素材の木の模型で展示していて、「作品」がどこにあるのかわかりづらい。
参考図面とハンドブック首っ引きで鑑賞、というのはかなりキツイかも・・・。
「作品」のスタイルも、建築家の個性を感じさせない商業建築のような感じで、まちがっても「現代建築100選」なんて写真集には載らなさそうです。

興味深かったのは、ベルリンでのプロジェクト「在独スイス大使館」「ベルリン中央駅近くの複合ビル」
ベルリンという都市が抱える<歴史=第二次大戦の記憶>の重さを感じさせるものでした。
「在独スイス大使館」は、戦前は周囲の建物と連続した街区ブロックの一部だったのですが、「ゲルマニア計画」(ベルリン大改造計画)と空爆で街区全体が破壊され、現在は大使館だけが陸の孤島のように広場にぽつんと建っています。増築の際に、かつてあった建物の不在を強く感じさせるよう、増築部分に現場打ちコンクリートによるレリーフを施しています。造形的にはややアンバランスな外観で、スイス大使館側がOKを出したということ自体、戦争の傷跡を強く感じさせるプロジェクトです。
「ベルリン中央駅近くの複合ビル」は、かつて「涙の宮殿」と呼ばれた東西ドイツ間の国境検閲所近くの再開発計画。この地区は、かつてミース・ファン・デル・ローエが三角形の「ガラスの摩天楼」の計画案を出したものの、当時の建築技術では不可能な設計で頓挫したのだとか。
D&Dの出した図案が、ミースの摩天楼を思わせる ひしゃげたような三角形なのが面白い。

この展示構成、日本の「都市と建築」に対する問題提起なんだろうなあ、と思いました。
六本木ヒルズが竣工する少し前、周辺住民の立ち退き問題がニュース番組でも取り上げられていた記憶があるけど、六本木に限らず都心近くでも 通り一本隔てて昔ながらの商店街があったりするんですよね。そうした街区を「再開発」して「新しい街」ができる。

私が前にいた会社は、そうした「新名所」のビルで展示会を開くのが好きだったので、汐留、六本木、表参道、乃木坂と渡り歩いたものです。
そのため、そんな「新名所」の賞味期限もだいたい2,3年で、また次の土地を再開発、というサイクルを目の当たりにすることにもなったわけで・・・。
すくなくとも六本木ヒルズは街の歴史はもちろん、未来を考えたプロジェクトではないと思う。その意味で、丸の内の再開発にはちょっと興味があります。
日本の都市計画の全部が全部悪いとは思わないけれど、近所(普通の住宅地)に「ここはヴィクトリア朝のロンドンですかっ?!」と突っ込みたくなるようなマンション(笑)が突然建ったりする昨今、結構身近な問題じゃないかと思いました。

・・・と、マジメな話はここまで。
オペラシティって意外にミュージアムショップの穴場でした♪
すぐ隣のコンサートホールに何度も足を運びながら、今まで気づかなかったなんて~。
特に現代アートの専門誌・書籍が充実していて、おもしろかったです。
ショッピングモールでオシャレな雑貨屋さんも見つけたし、コンサートホールも能楽堂も近いので、お楽しみが増えそうです(^0^)