「運命の人」最終回

なにかと話題の日曜ドラマ「運命の人」、こないだようやく完結しましたね。
後半数回は、社会派ドラマというより東海テレビあたりの昼ドラ化してきたというか、西山事件はおろか山崎豊子の小説からも離れてきて、さらにナベツネまで宣伝活動に一役買っていたらしい空気もプンプン漂ってきてましたね。なにせナベツネの抗議記事を掲載したのは「サンデー毎日」だし、後半から山部が異常にいい人&カッコよくなってきてミエミエ(笑)。どーなるんだと思ってましたが、最終回の二時間スペシャルでどうにかうまくまとめたって感じです。
ま、どん底まで落ちた都会のエリート記者を救うのが、無垢な魂を持つ南国の若い娘っていう設定(原作では津久山のおじさん)とか、「へっ、このオハナシってもしかして人魚姫???」とツッコミどころ満載でしたが。さすがはかつてドラマ「幸福の王子」で主演をつとめたモックン!まあ今は おぅじ様って呼んだ方がしっくりくるけど(笑)。
 
前にもちらっと書いたけど、この「外務省機密漏えい事件」(西山事件)の裁判は、沖縄返還交渉の際の密約の有無と「知る権利」をめぐるはずの審理が、男女問題にすり替えられて密約の存在自体が曖昧にされたという経緯をたどるのですが、今回のドラマ自体も三角関係の愛憎劇へシフトするという、まさに西山事件そのもののような展開になりました。当時、販売部数を伸ばすために煽情的な記事が書かれたのと同様の事態が、今回も視聴率獲得のために起きたわけで、そういう意味では西山事件を知らない世代の視聴者も40年前の事件を「追体験」したといえるのでしょうか。個人的には、ドラマ自体の内容より、メディアを通して再度そうした形で「受容」される事件の性質に興味がわきました。
それ以上に、原作では全4巻中の最終巻のみ、ドラマにいたっては10話完結の最終回のみに「沖縄」が取り上げられるという構成こそが、(山崎豊子の原作の「弱さ」以上に)、まさに沖縄問題がいかに本土の視野の外に置かれ続けているかという現状を物語っていると思います。
参院選前に沖縄返還交渉を早期終結させたいと焦った当時の佐藤栄作政権の功績づくりが優先された結果、本土復帰したとはいえ、土地の復元保障費をアメリカはビタ一文も払わず、米軍のお膝元として今なお治外法権下に置かれ続ける沖縄。
やまねこにとっては、山部(ナベツネ)の「日本の領土の0.6%に過ぎない沖縄の地に、基地の74%が置かれている」というセリフが、最終回2時間の中で一番インパクトが強かったです。沖縄の地に流れ着いた弓成の周囲では、目の前で米軍ヘリが墜落したり少女暴行事件が起きたり、都合よすぎるくらい立て続けに事件が起きるのですが(昭和50年代当時の沖縄は今以上にそうした状況だったのでしょうけど)、そうしたエピソード以上に、この数字は衝撃的でした。
 
そう考えると、甘さや原作からの乖離もあるにしても、事件の背景を戦後世代にもわかりやすくまとめて知らしめた今回のドラマには、一定の評価はできるといえるのでしょう。
数年前、岡田克也副総裁が外相当時に密約問題の究明に取り組んで外相はずされたけど、政権が交代して、外相に就任したのがよりによって超頭が固い克也(笑)だったから(?)実現したことだったわけで、あの時続けていたら、この最終回の取り上げ方も違っていたのかもしれないな・・・とも思ったことでした。