NHK交響楽団 第1646回定期公演

ムストネン / 3つの神秘(2002)
ベートーヴェン / ピアノ協奏曲 ニ長調
       (ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61の作曲者自身による編曲)
シベリウス / 交響曲 第6番 ニ短調 作品104
シベリウス / 交響詩フィンランディア」作品26
 指揮  オリ・ムストネン
 ピアノ オリ・ムストネン

<開演前の室内楽
グリンカ / 悲愴三重奏曲 ニ短調
 クラリネット 磯部 周平 
 ファゴット  岡崎 耕治
 ピアノ    岡崎 悦子


久しぶりにN響に行ってきました。
1月にシェーンベルクマーラー聴きに行って以来かなあ。
N響は3月と7,8月は定期公演はお休みだから、ボーッとしているとあっというまに第9に・・・。

今回は開場と同時にNHKホールに入りました。
お目当ては「開演前の室内楽」。開演45分前から30分間、ロビーの一角で楽員による室内楽が楽しめるのですが、5月は来月で「卒業」を迎えるクラリネットの磯部さんとファゴットの岡崎さんが出演されています。
ドリンクコーナーに冷えたシャブリが出ていたので、グラス片手に室内楽鑑賞~~♪
この日のグリンカは「悲愴」というタイトルからは意外に明るいサウンドで、ロシアっぽい華やかさも感じさせる曲。お二人ともとても来月で還暦とは思えない若々しさで、これが能楽師ならover60で「まだまだこれから」なのに~~。オケの楽員ともなるといろいろと難しい面があるのでしょうが。。。ちょっと考えさせられてしまいます。

さて、今日の指揮者オリ・ムストネンは名前からもわかるようにフィンランド出身で41歳の気鋭。
フィンランド人の指揮者といえば、エサ・ペッカ・サロネンを思い出しますが、このムストネンもサロネンに劣らぬ甘~い容姿の持ち主♪
・・・とにかく、ムストネンの自作に弾き振りのピアノコンチェルト(原曲はヴァイオリン)、そしてシベリウスと、ムストネンの才能を堪能できますよ、というプログラムみたい。

1曲目の「3つの神秘(2002)」は、出だしの弦が繊細で透明感あふれるサウンドで「おぉ、今日は当たり♪」とニンマリ。静謐そのものの第1曲からリズミカルな第2曲、そして静謐ながら音の微妙な綾を楽しませる終曲と、短いながら聴きやすく、気のきいたお通し・・・じゃなかったオードブルのような小品。弦とチェレスタの絡みが美しく、今日のような蒸し暑い日にはぴったりでした

2曲目は、あの有名なベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲をピアノ用に編曲したもので、ムストネンによる弾き振りです。
この曲はなんといっても第1楽章終盤の長大なカデンツァをどう演奏するのかが気になるところ。
私の聴いた感じでは、原曲をそのままピアノに移し変えたというよりは、行進曲風にしてティンパニと絡ませるというユニークなアレンジがなされていました。無理してヴァイオリンに近づけようとするよりピアノの特性を活かした方がいいのでは~とベートーヴェンは判断したのかな?
でもやはり、これはちと無理のあるアレンジじゃないかと思います。原曲のスケールの大きさが殺がれてしまっている上、弾き振りのせいかピアノが散漫に聴こえてしまう箇所がところどころあったようにも感じられて、正直「?」な演奏でした。


そしてプログラム後半のシベリウス
「3つの神秘」をさらに骨太にした雰囲気の、爽やかで透明感あふれる演奏でした。
フォーレを聴いてても思うことだけど、やっぱりその国の指揮者が振るとガラッとイメージが変わるんだなあ。
交響曲第6番」は初めて聴く曲でしたが、「繊細・透明」の極みのような第1楽章から後半からは民族音楽っぽいテイストも入ってきて、綺麗なだけでなくユニークな作品でした。この曲の演奏頻度が低いなんて。。。
N響の弦セクションは一気に若返ってサウンドがどうなるか気になっていたのですが、柔軟性が増したような気がします。指揮者の要求に非常によく応えようとしている、といった印象です。
フィンランディア」は、(たぶん)この日一番テンションの高かった演奏。ステージに出てくるときからムストネンの気合がバリバリ感じられるんだもん(^◇^;)
全体的にテンポはやや速め。冒頭の金管セクションが意外に(←超失礼)健闘していて、弦も木管もガンガンいきます!といった雰囲気。重厚で密度の高い音の層を感じさせます。
有名な「フィンランド賛歌」の、2本のフルートの清澄な響きにオーボエが重なり、弦が賛歌を静かに引き継ぐところは、やはりこの曲の聴かせどころ。今日のプログラムって、半ばソリストのような木管奏者にとってはおいしい内容だったんじゃないかと思いますけど(笑)
フィンランディア」は「さぁ感動しろ!」といわんばかりの浪花節的な振り方をする指揮者にあたるとガックリきますが、ムストネンは無駄なものは一切削ぎ落とした、肉厚の万年筆のようなタッチで一気にフィナーレまで引っ張っていくような演奏。まさに息もつかせぬ数分間でした。


初夏になるとフォーレを聴く私、今年は舘野泉さんのCDを聴いたりとシベリウスづいてます。。。
ムストネンの作品もリリースされているそうなので、この夏は北欧シリーズのCDが増えるかもしれません。