銕仙会 7月定期公演

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能「敦盛」
シテ  長山 桂三
ツレ  観世 淳夫  青木 健一  安藤 貴康
ワキ  村瀬  純
アイ  山下浩一郎       
笛    寺井久八郎
小鼓   森澤 勇司
大鼓   原岡 一之
地頭  清水 寛二       
後見   若松 健史  長山禮三郎

狂言「水汲」
シテ  野村 万蔵
アド  小笠原 匡

能「百萬」
シテ  山本 順之
子方  齋藤 舞佳
ワキ  野口 敦弘
アイ  野村 扇丞       
笛    寺井 宏明
小鼓  林  光寿
大鼓  亀井  実
太鼓  三島元太郎
地頭  観世銕之丞
後見  野村 四郎  鵜澤 郁雄

(7月10日 宝生能楽堂にて上演。写真は嵯峨野・清涼寺の正門)


銕仙会は平日の18時開演なので、たいていタクシーと電車乗り継いで駆け込んでます。
でも、夜のお能のほうが私は好きです。
昼夜問わず照明のきいた、ビルの中の能舞台にさえ夜の気配は浸透していて異界モード。
この日はかなり疲れていたのだけど、かえって完全な受け身になって「敦盛」「百萬」のストーリーすら考えずに観ることができたのでは、と思いました。


「敦盛」
シテは初見ですが技術のしっかりした方で、緻密に計算された舞台といった印象でした。
「魅せ方心得てます!(笑)」といったところでしょうか。
出目満志作の「十六」は、アイラインがはっきりしているせいかシャープな感じで、どこか「若女」に通じる中性的な雰囲気の面でした。
この日は番組表もろくに見る時間もなかったのですが、鼓の音がきれいだなあ~と思って見たら、やはり森澤さんでした。「石橋」の咆哮もよかったけど、「敦盛」の近いような遠いようなどこでもない場所から聴こえてくる、といった響きもなかなかでした。

「百萬」
銕仙会のお楽しみのひとつは面と装束。いつも華やかかつ繊細で見ごたえがあります。
扇丞さんのガチャガチャした念仏を聞いて現れたシテの装束は・・・薄い抹茶色の地に枝垂れ柳&銀杏を箔押し、襟元とたもとに象牙色の露をあしらった長絹・青みがかった濃い緑の地に笹の意匠の縫箔姿。烏帽子の紐と鬘帯の挿し色は臙脂色。洗練されたコーディネートです。
面は大和作の「深井」。深井や曲見のいい面は、若い女の面にはない陰影と包容力、成熟した女性の色香があって、面打ち師の洞察力に感心させられますねー。

シテは「隅田川」に続いて 今年は女物狂いが当たり年(?)の山本順之。
「敦盛」までは観察モードだった私だったけど、「百萬」はシテが登場した途端に空気に色がついたというか、引き込まれて飽きるということが全然なかった。
全体的にとても格調高い百万で、扇丞さんのヘタ(?)な念仏に「あー聴いてられないわっ!」と
しゃしゃり出てくるというよりは、ざわめきを耳にして今度こそ子どもに会えるかもしれない・・・と思わず出てきてしまったといった趣。
芸づくしに入ってからは、冴え冴えとした謡、水が流れるようななめらかな舞がリズミカルですばらしく、特に一の松で三笠の山(違ってるかも)を振り仰ぐ型は、上品な情趣がありました。
こないだの体験講座の影響か、舞台をぐるぐる回るところで「あ、子どもを捜してるんだなー」とか、子どもと再会して袖を前後に激しく振る型で「嬉しくて気持ちが高揚しているんだなあー」など、感覚的にすっと入れて、あんまりぐちゃぐちゃ考えず観るのもアリかもしれないなあ(わりと素直なやまねこ)。
正直、「隅田川」のような芝居っ気(?)というかストーリーに引きずられることがなかった分、
このおシテをちゃんと観られたな~という気がしました。
子方はちょっとつらそうな場面もあったのですが、長時間がんばって座っていて可愛かったです。

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<本日のおまけ>
「百萬」の舞台、清涼寺には去年の秋行ってきたのだけど、わが子をさらわれた主人公が女物狂いとなって大念仏の群衆の中で踊り狂い・・・というのも納得の、広い境内を持つお寺でした。
清涼寺には能舞台のような造りのお堂もあって、壬生狂言も上演されているのだけど、もともと芸能と縁の深いお寺なのでしょうか。