7月観世会 定期能

イメージ 1

☆7月観世会定期能
  ●能「自然居士/忍辱之舞」
    シテ:観世清和
    子方:観世三郎太
    ワキ:森常好
    アイ:山本則秀
    笛 :松田弘之 /小鼓:観世新九郎 /大鼓:柿原弘和

  ●狂言「伯母ヶ酒」
    山本則俊  遠藤博義

  ●能「半蔀」
    シテ:坂井音重
    ワキ:福王茂十郎
    アイ:山本泰太郎
    笛 :寺井久八郎 /小鼓:亀井俊一 /大鼓:安福光雄

  ●仕舞
    「道明寺」関根祥六
    「知章」 武田宗和
    「花筐」 木月孚行
    「車僧」 津田和忠

  ●能「鉄輪/早鼓之伝」
    シテ:梅若万三郎
    ワキ:高井松男
    アイ:山本則重
    笛 :一噌隆之 /小鼓:大倉源次郎 /大鼓:守家由訓 /太鼓:三島元太郎


今日は30℃を越す蒸し暑さ。松涛の坂がいつもに増してきつかったです。
おまけにすごい混みっぷりで、開場15分前に長蛇の列に並んで席ゲット。
(自由席がほとんどらしい・・・でも、真夏とか雨の日とかはイヤだなあ~~)


「自然居士」
観世清和氏の舞台を観るのは初めてです。
人買いから少女を救おうとする自然居士は、スーパーヒーローのような役でしょうが
これがクールかつ端正な自然居士。綺麗です。というか綺麗すぎる・・・。
面や装束からして涼しげで、正義の味方の熱さ(暑さ?)・汗臭さなんか無縁そう。
森常好氏の極悪人っぷりが、クールビューティーな御宗家とはそりゃあもう対照的で
子供をぶつわ、「命を取らう」と脅すわ、「散々になぶって返そうずるにて候」と言うわ
自然居士に舞が短かすぎるだの鞨鼓を打てだの、もう言いたい放題。
ここまで徹底して悪だと、かえってそっちの方がインパクト強いわ(笑)
そうそう、松田弘之さんの笛も素晴らしく、吹き始めから胸に訴えてくる音色でした。
仙幸さんに続いて要チェックな笛方発見です♪

「半蔀」
この曲、金沢で観たときの清楚で初々しい印象が強いのです。
今日の夕顔は優美なオトナの女でした。
緑がかった薄い青磁色の長絹、薄い朱色の緋大口という装束は、渋すぎな気がするけど。
他のブログでは「退屈」「眠い」なんて書かれる半蔀だけど、
詞章が美しいので眠っちゃうなんて、もうホントもったいないと思います。
観世流の歌うような地謡とシテの掛け合いによる「花の夕顔~」のリフレインで
今回もお約束どおりボーッとなってしまいました(笑)
舞も流れるように美しく、気がついたら終わってた・・・という感じでした。
今日はコアなお客が多かったのか、しばらく拍手が鳴らなかったのもよかったと思います。

「鉄輪」
早鼓之伝、というだけあって大小鼓が大かつやく!源次郎カッコイイ!!
前シテが「言ふより早く色変わり」鬼に変じて走り去っていく場面の小鼓の乱打は、
背後に控えてた若手くんは きっと「オレも打ちたい!」とか思ってたかも(笑)

梅若万三郎は、鬼になりきれず人間にも戻れない哀れさが全身から漂っていました。
去年見た満次郎様(ただし仕舞)が、裏切られた怒りの方が強く感じられて
次の時節には 怒りの勢いに押されて迷いつつも夫を殺しそうなのと対照的。
万三郎の鉄輪は、足拍子の踏み方もためらいが感じられて
「ある時は恋しく または恨めしく」なんて、今さら言っても仕方ないのに・・・
晴明の祈祷がなくても、何度時節を改めても、彼女には決して夫を殺せないでしょう。
自分の祈祷だけ頼んで後妻も守ろうとしないサイテー男なのにね~`ヘ´プンプン
そんな白黒つけられない人間の弱さに対する救済を、万三郎は意識したのかも・・・?
シテの個性の違いもあるだろうけど、こうも印象が違うとは。
こうなったら、満様の鉄輪もいつか(能で)観てみたいです。

(追記:装束もかなり凝ったもので、前シテは黒の唐織&金泥みたいな地の縫箔。
後シテは浅葱の地にオレンジがかった金の紗綾形の摺箔&浅葱色の縫箔でした。
忘れないうちに書いておこうっと)

※写真は売店で買った「半蔀」「鉄輪」手のひらサイズの謡本。
 表紙がどうしてもスズメにしか見えないんだけど・・・千鳥だよね?!(^_^;)