線こそ命

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昨年の暮れに、それまで十数年間セミロングだった髪をばっさり切った。
20cm近くも切ったから、かなりのイメージチェンジだったのだけど
十年以上もベースは同じ髪型を続けていればさすがに飽きてくるので、
長い髪と一緒に余分なものも削ぎ落したようで、なにやら脱皮したヘビの心境。
年齢的にも精神的にも、もうフワフワヒラヒラがそぐわなくなってきたのだと思う。
 
襟足を出すようになってから買う洋服もシンプル路線になってきて、
キャメルのコートにスキニ―タイプのブルーデニムとか、
ドルマンスリーブのゆったりしたラインのニットに細身のパンツorタイトスカートとか、
余計な装飾がない分、アウトラインのきれいな服に目が止まるようになった。
ベースがシンプルなら、鮮やかな柄物スカーフや揺れるイヤリングにも挑戦できて
既存のワードローブに足し算引き算しながらコーディネートするのが楽しくなった。
 
写真のワンピースは、この冬のお買い物最大のヒット(←自己評価)。
目の詰まったウール地で、ポイントは背中のタックのみ…というシンプルさ。
一枚で完成されるような凝ったデザインのワンピースもいいけど、
このワンピースはシンプルな分、手持ちの小物が総動員できて計算し甲斐がある。
今まで試してみたのは、ロングパールネックレス、チャコールグレーのタートル、
バレエシューズ、カラータイツ、クロップドパンツレオパード柄のミニバッグなど。
勿論これ一枚で着て、ロシア正教の司祭風のストイックなラインを楽しんでもいい。
 
何通りものコーディネートができるのは、アウトラインがしっかりしているからこそ。
(なんかこじつけっぽいけど)近藤乾之助さんが「謡う心 舞う心」の中で
名人の謡の印象を線描にたとえていらしたけど、美しいもの・スタイルの完成度は
やはり線描というベースこそ要諦になるという点で、本質を突いていると思う。
能という伝統芸能で使われる装束と、現代の洋服は一見別のもののようだけど
生の舞台を観続けることで、装束の美的感覚は全身のアウトラインをベースに、
素材や配色の微妙な足し算引き算の上に成り立っているという点では同じだと思う。
能を観るようになってから、光りモノも取り入れるようになったしね。
舞台を観るたびに装束や面はメモしているのだけど、10年後のストックが楽しみだ。