秋の夜長

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 3年前に結婚と転居、部署異動という三大転機が重なって、生活環境の変化への適応にエネルギーを割いたせいなのか、気がついたら生活習慣も大きく変わっていた。

 独身時代の私の眼には、「子どものいない既婚者」ほど自由な立場の女性はいないと映っていた。当時の職場には、毎週のように都心で飲み歩いたり海外旅行に出かける既婚女性が何人かいたから。既婚者という通行手形(というか免罪符)とWインカムの経済力を持つ彼女たちのお金の使い方は、独身女性のそれとは比較にならない。
 で、実際に「そっち側」に入ってみると、そんな余裕は全然ございませんでした。どう考えても、結婚前の方が断然自由。私の場合は、新しい環境への適応に精一杯だったのが大きいけれど、彼女たちの華麗なるアーバンライフ(死語)はマウンティングとかいうものだったのでは、と今では思っている。

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 そんなわけで、去年の夏に買ったけれど一度も活用できなかった本。都心の通勤帰りに気軽に立ち寄れるスポットを紹介した本で、国立能楽堂の「働くあなたのための能楽(開演時間遅めな公演案内)」も紹介されている。地方都市の夜が早いことを考えると、東京ほど安全に「夜のよりみち散歩」ができる街は世界でも稀だろう。
 私にとっては、せめて3年早く出版してくれてたらなあ~と思える内容ばかりだけど、実践に移していたら今頃夫の隣で本を読む休日を過ごしていないかもしれない。

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 外出が減った分、読書量は以前より増えていて興味の赴くままに図書館で借りてきた本たち。
 「シャチ 生態ビジュアル百科」(水口博也 編著/誠文堂新光社2015刊)は、図書館の推薦本コーナーで目に留まって借りてきた本。鯨をも襲う海のギャングと呼ばれるシャチ(Orca)が、実は奥の知れない知性と感情を持ち、太古の昔から人間を畏怖させながら身近な存在であったということが美しい写真と簡潔な文章で紹介されている一冊。読み終わる頃には、知床半島のウォッチング船で北の海を泳ぐシャチをこの目で見たくなった。
 「高齢者の犯罪心理学」(越智啓太 編著/誠信書房2018刊)は、先日も横浜で71歳の通り魔が逮捕されるなど高齢者の犯罪が増加傾向の現在、タイムリーなテーマの本。高齢者による犯罪事案やなりすまし電話詐欺の被害心理といった事案の紹介だけでなく、高齢者の心身機能と犯罪の関連性や司法・矯正といった視点からの分析・考察もあり、結構専門的な内容。というか専門書ですね、これ。
(うちの親で心配なのは、車の運転と詐欺被害だなあ。もう少し連絡の頻度を上げようと思った次第。)
 私自身も数年前にカルディで孫を連れたお婆さんがお菓子を万引きしている現場を目撃したことがあって、「子どもの目の前で?!」とビビッている間に相手はごく自然な態で店を出て行った。たぶん常習犯だと思うけど、本書によると高齢者の万引きで一番多い類型とのこと。あの人、今ごろどうしているんだろう…。

 面白く読むポイントは、「拝聴」スタイルの受け身ではなく、ちょっとでも批評的な「読み手としての自分」を意識しながら読むこと。そして、読み進めても面白くない(というか読みづらい)と感じたら躊躇なく撤退することかも。
 ネットでは代替できない、本当に行きたい場には出かけるけれど、自宅や地元でもそれなりに楽しめるような暮らし方ができるようになったときこそが、本当に都会に適応したといえるのかもしれない。