やまねこの本棚

「青眉抄」(上村松園著・講談社文庫 ※絶版)

上村松園「焔」(大正4年) 記憶にある限り、最初に「美術展で観た絵」です。 母の話だと美術館に連れて行けるギリギリの年齢だったらしい。 妖しい眼の光と着物の柄が怖かったけど、 それ以上に子ども心にも「見てはいけない何か」 を感じたのを憶えていま…

「演目別に見る能装束」(観世喜正著・淡交社)

こないだ、月並能の記事で「羽衣」の装束を長絹、と書いた後 他の方のブログで、「あれは舞衣ですよー」という記述を読んだので訂正しました。 前後の曲で長絹を着用したから、重ならないようにしたとのこと。 うーん、なかなか奥が深いです。 そんなわけだ…

「ロートレック荘事件」(筒井康隆著・新潮社)

久々の読書コーナー。 金沢で買った「ナラタージュ」を取り上げようかと思っていたのですが、 昨日ロートレック展を見てきたので、こっちを先にUPします。 筒井康隆「ロートレック荘事件」(新潮社) 要約するとタイトルどおり、お金持ちの別荘で殺人事件が…

雪のお正月 -「春の雪」と「ルートヴィヒ」-

あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いいたします。 今年は、新潟でも数年ぶりの雪のお正月を迎えました。 夜半に障子を開けて外をのぞくと、 古ぼけた水銀灯に照らされた雪が、スローモーションで舞っています。 伊藤整の「雪あかりの道」…

「FIGARO」のブックガイド

このブログ、もとはブックレビューや美術展の感想を書くつもりで 開設したものでした。 それが、ふとしたことから路線が変わり、 ・・・設定画面をチェックしたら、「読書」が11本でお能関係は16本。 11本中3本はコミックだから、活字ものとしては少なすぎ。 美…

憎悪は、消えますか? -「PLUTO」5巻-

金曜日、待ちに待った「PLUTO」5巻(普通版)が発売されたので、 仕事帰りにBOOK 1stで買ってきました。 おあずけが長すぎたせいか、深読みしてた予想が結構当たっていて、 新鮮味があまり感じられなかった・・・・・・(笑) それにしても、読み進めるほど「人間…

綾の鼓-「近代能楽集」(三島由紀夫)-

毎日毎日、ただでさえ忙しいのに、 中途採用とくれば、新卒とは違う厳しさもあるわけで、 このところ、心がカサつき気味なのでございます。 こういうときこそ、豪華絢爛な三島ワールド。 「近代能楽集」は、ずいぶん前に読んだきりですが、 いま読み返すと、…

ゴーストライター/「迷走地図」(松本清張)

職場の広報誌の編集を担当することになりました。 といっても、実態はトップはじめお偉いさん方のご挨拶文のゴーストライター。 最新ニュースや編集後記と合わせて、原稿用紙8枚分なので 分量的には大したことはなさそうなのですが、 通常業務と並行して進…

「すらすら読める風姿花伝」(林望)

お能関係のブログをチェックしていると、 謡や仕舞を習ったり能楽堂に通いつめたりしてる学生さんがいたりして、 つくづく羨ましいなー、と思います。 新しい世界を知るためだけに勉強する、ということがどんなに楽しいか、 本当にわかる頃には時間が取れな…

秋の夜の香り-「華氏451度」-

気温が上がった一昨日あたりから、 都内でも金木犀の甘い香りが漂うようになりました。 この香りを嗅ぐと、「ああ、秋本番だな~」と実感します。 ご近所さんにはガーデニングに凝る家庭が多いので、 早春は沈丁花、夏は馬酔木(あしび)に梔子(くちなし)…

今読んでいる本、これから読みたい本

この夏は、お能との出会いがあったので、やはりそっち方面の本に手が伸びました。 初心者向けの本が多いとはいえ、当たりはずれもかなりあったなー。 いま読んでいる「謡曲平家物語」(白洲正子著・講談社文芸文庫)は、 ☆3.5いきそうなくらい、面白い。 「…

「ウーマンズ・アイランド」(林真理子著・マガジンハウス)

以前、汐留にほど近いオフィスで働いていたので手に取った本。 シオサイトがオープンして数ヵ月後に、新橋の事業所に異動になり、 汐留シティセンターによくペストリーを買いに行ったり、 夜食事に出かけたりしていたので、ちょっと懐かしい。 内容は・・・…

PLUTO(浦沢直樹)

彼(浦沢)の話が長いのは、「MONSTER」で懲りていたはずなのです。 どうせ読むなら、連載終了後のオトナ買い一気読みがいいだろうとは よーーーーっくわかっていたのです。 それなのに。ブックオフで1巻を手に取った私がバカだった・・・。 11月発売の5巻は…

裁判長!ここは懲役4年でどうすか(北尾トロ著/文春文庫)

中学生3年生の夏休み、地元の地裁へ傍聴しに行ったことがある。 社会科の担任がちょっと左がかっていて、歴史の時間に森村誠一の「悪魔の飽食」を一部抜粋したものを副教材のプリントに使ったりするような人だったのだが、夏休みの課題というのが「裁判の傍…

「のらいぬ」(谷内こうた著/至光社)

久々に美しい絵本に出会った。 夏のある一日。南国の日差しを照り返して光る砂浜。 犬と少年の出会いを幻想的に描いた作品。 極限までシンプルな文章がかえって想像力をかきたて、絵本の中に連れて行ってくれる。 中盤で、犬と少年が並んで灯台の上に立って…

「対訳 ペレアスとメリザンド」(岩波文庫)

ここ一ヶ月、フォーレにハマッています。 その昔、吹奏楽部でフルートを吹いていた山猫にとって、フォーレは好きな作曲家の一人でしたが、劇音楽「ペレアスとメリザンド」を聴いて以来、繊細で抒情的な世界の虜に。 笛吹きなら誰でも一度は聴いたことのある…