やまねこの本棚

読書という旅-「ローマ人の物語」

今日はお休みだったので、ひさしぶりに一日家にいて読書&ブログ三昧でした。 昨夜書店に立ち寄ったら、塩野七生の「ローマ人の物語・キリストの勝利」が文庫化されていたので、 キリスト教の国教化が進められつつあった4世紀のローマにおいて、おそらくた…

「停電の夜に」(ジュンパ・ラヒリ/新潮文庫)

この人の作品は、読むこと自体が快感だ。 1967年生まれ、ニューヨーク在住のインド系女性作家ジュンパ・ラヒリは、2000年にこの短編集でデビューしてまもなく、新人作家としてはきわめて異例のピュリッツァー賞受賞という、はなばなしいスタートをきった。 全…

「評伝 観世榮夫」(船木拓生/平凡社)

きのうの午後、神保町で人に会う約束があったのですが、 待ち合わせ時間より早く着いてしまい、ふと思いついて能楽堂に電話。 会はない日だけど事務所は開いているというので、某公演の前売券を買ってきました。 希望の区画の席も残りわずかでしたが買えてラ…

シェイクスピアのソネット

君を夏の一日に喩へようか。 君は更に美しくて、更に優しい。 心ない風は五月の蕾を散らし、 又、夏の期限が余りにも短いのを何とすればいいのか。 太陽の熱気は時には堪へ難くて、 その黄金の面を遮る雲もある。 そしてどんなに美しいものもいつも美しくは…

「自然な建築」(隈研吾/岩波新書)

「あるものが、それが存在する場所と幸福な関係を結んでいる時に、われわれは、そのものを自然であると感じる。自然とは関係性である。自然な建築とは、場所と幸福な関係を結んだ建築のことである。場所と建築との幸福な関係が、自然な建築を生む。」 2008年…

<歩く女たち>の系譜-「説教 小栗判官」(近藤ようこ/ちくま文庫)

お能を観ているせいか、中世の文学作品をすこしずつ読むようになっています。 中世といっても、平安時代後期の平氏政権の成立(1160年代)から鎌倉時代、南北朝時代、室町時代、戦国時代まで範囲がかなり広いのだけど、この時代に書かれた文学は本当に面白い…

「夢の通い路」(倉橋由美子/講談社文庫)

旅先の、あるいは眠れぬ夜のお伴に おすすめの作家は誰かと訊かれたら 迷わず倉橋由美子と答えます。 そのまま夜を徹して脳細胞を活性化させたいのなら デビュー作「パルタイ」から「聖少女」までの初期作品。 そして、典雅で残酷な幻想ワールドをただよいた…

「日本の伝統美を訪ねて」(白洲正子/河出文庫)

先日帰省したときに、録画してあった新作能「花供養」(シテ:梅若玄祥)を見ました。 私がお能本・エッセイ等を通してなんとな~くイメージしてた「白洲正子」と 多田富雄の描く「白洲正子像」には、かなりギャップを感じたけれど、 とても凝った舞台&メイ…

お酒が飲みたくなる本 -吉田健一「旅の時間」(講談社文芸文庫)-

仕事の帰り、電車で吉田健一の「旅の時間」を読んでいたら、 むしょうにお酒、それもウィスキーが飲みたくなって 地元の酒屋さんで 先日統合が報道されたばかりの洋酒メーカーのお酒を買いました。 (会社が統合しても、ローヤルとかトリスの名前は残すのか…

「百物語」(杉浦日向子)/「だいふくもち」(田島征三)

怪談は大好きなので、怪異譚のたぐいは夜中に布団ひっかぶって読んでますが、 最近のお気に入りは杉浦日向子の「百物語」(新潮文庫)。 以前記事に取り上げた、近藤ようこと同じ「ガロ」出身の漫画家です。 「百物語」とは、江戸時代からあったという怪談の…

最後の琵琶法師-「琵琶法師」(兵藤裕己/岩波新書)-

琵琶法師、といえばラフカディオ・ハーンの「耳なし芳一」。 その「芳一」の末裔が ほんの十数年前まで存在していたという。 山鹿良之(1901~1996)。 琵琶の弾き語りのみを唯一の収入源とし、全貌を把握しがたいほどの膨大な段物(複数の段から成る長編の…

「桜の森の満開の下」(坂口安吾・近藤ようこ/小学館)

某メガ書店で 近藤ようこの「桜の森の満開の下」「妖霊星-身毒丸の物語」を発見。 新潟県の特産といえば米と酒ですが、漫画家も大勢産出、じゃなかった輩出しています。 有名どころでは高橋留美子(めぞん一刻)、水島新司(ドカベン)、魔夜峰央(パタリロ…

「謎の1セント硬貨-真実は細部に宿るinUSA-」(向井万起男/講談社)

優雅な読書のお供は~マキオちゃんこと向井万起男さんの新刊です。 マキオちゃんとは――慶応大学病院病理診断部のお医者さん、というより 宇宙飛行士・向井千秋さんのご主人といった方が有名かも。 実は私、 マキオちゃんに会ったことがあり(嘘。病院のエレベ…

「心より心に伝ふる花」(観世寿夫/角川ソフィア文庫)

図書館で貸出し継続→延滞→結局、文庫本買って読了した本です。 忙しかったこともあり、私としては珍しく読みきるのに時間がかかりました。ふぅ~っ。 観世寿夫(1925~1978)は、観世流シテ方の銕之丞家の長男として生まれ、戦後の能楽復興期に「能楽ルネッ…

「加賀宝生のい、ろ、は」

お仕事はそろそろ繁忙期、お能は能閑期(←私がです)なこの頃 おもしろい雑誌を入手いたしました♪ 表紙は檀れい。美人だ~~。 月刊「金澤」は、タイトルどおり金沢のご当地雑誌で 今月号の特集は「能『加賀宝生』のい、ろ、は」。 サブタイトルには「金澤人…

「苔のむすまで」(杉本博司/新潮社)

「一つのことを理解することとは、 その奥にさらに深い未知があるということを理解することだ」 ――「歴史の歴史」 先月、金沢21世紀美術館 「杉本博司『歴史の歴史』展」にて買った本。 21美は円形の建物の中にそれぞれ独立した展示室があるのだけど、 各展…

「絵本 鼠草子」(サントリー美術館)

「ね年」もあと一ヶ月を残すのみとなりました。 私にとっては、「ねずみ」のようにチョロチョロ走り回ってばかりの年でしたが・・・。 さて、「ね年」のうちに 大人も楽しめる「ねずみの絵本」をご紹介します! 「絵本 鼠草子」 サントリー美術館所蔵の「鼠草子…

「花のレクイエム」(辻邦生・山本容子著/新潮社)

ブログ本体&アバターの背景を「薔薇」に模様替えしてみました。 このところデッドヒート気味の反動かもしれません(泣) 今のお仕事、春秋は特に忙しいんです。 今日は雨降りだったので、お部屋とクローゼットの整理をしてリフレッシュ。 きれいに片づいた…

白洲正子と品格本

自宅近くの書店は、いわゆる「町の本屋さん」なのですが 店頭に定期的に岩波書店や平凡社の単行本が「フェア」と称して並びます。 (新書じゃないですよ、単行本ですよ、単行本!) どうやら出版社の営業が期間を定めて置いていくようですが、 店主自身が本…

「背教者ユリアヌス」(辻邦生著/中公文庫)

文庫本1,100頁以上もの大長編ですが、読み出したら止まらなくて実質10日間で読了。 電車の中で、乗り換え駅のホームで、文字どおり寸暇を惜しんで読みました! 長編小説を読む楽しさを存分に味わえる作品です。 レタリングの美しい装丁も、本を手に取る楽し…

「朝日の中の黒い鳥」(ポール・クローデル/講談社学術文庫)

美術好きな人なら、クローデルというと悲劇の彫刻家カミーユ・クローデルを思い浮かべるかも。 著者はカミーユの弟。詩人にして外交官の彼は、大正期に駐日大使として来日しています。 タイトルの「朝日」は日出づる国、「黒い鳥」はカラスのこと。 解説によ…

「オリエンタリズム」(E・サイード/平凡社ライブラリー)

以前、ラフカディオ・ハーンの「怪談」を記事に書いたところ、 かたつむり殿さんから平川本(比較文学者の平川祐弘氏の訳本)を教えていただいたり、 ラ・フランスさんから丁寧なコメントをいただきました。 まずはこの場を借りてお礼申し上げます。 前回の…

「怪談」/ラフカディオ・ハーン(角川ソフィア文庫)

お盆といえば、 いまやただの帰省か行楽シーズンに成り下がってるけど 本来は先祖迎えの季節(のはず)。 我が家の宗旨は浄土真宗ですが、お寺さまにご挨拶に行ったり 迎え火・送り火を焚いたりしています。 ・・・といっても、庭にある愛犬のお墓の前で 割り箸…

「鳥にさらわれた娘」/安房直子

このところ、更新が滞ってますね・・・。 新潟出張の前から新しい仕事を任されて、いまはそれで手一杯という感じです。 でも、仕事もそろそろ落ち着くので来週お休みをいただくことにしました。 こういうときって、ネタはあっても書けるほどには温まっていない…

「嵯峨野明月記」(1)

<嵯峨本>とは、江戸時代初期に出された美しい装丁の豪華本です。 開版者・角倉素庵の創意により、琳派の能書家・本阿弥光悦が本文の版下を書き、 本文中には「風神雷神図」で名高い絵師・俵屋宗達が大胆な絵柄を描いています。 本書は、この<嵯峨本>をつ…

「シャネルの真実」(山口昌子/新潮文庫)

前回「去年マリエンバートで」の記事でたまたまシャネルの ドレスにふれたので、こちらも紹介することにしました。 このテのタイトルって、なんかタレント本みたいですが(笑)、 本書はれっきとしたノンフィクション。 著者は産経新聞パリ支局長で、産経の…

「ワキから見る能世界」(安田登/生活人新書)

観世能楽堂で「鬼の研究」(馬場あき子/ちくま文庫)と一緒に買った本。 著者は下掛宝生流ワキ方能楽師です。 能楽を取り上げてる新書って珍しいですね。しかもワキ方の本とは。 (シテ方の書いた本なら わんさかあるけど) ワキ方はたいてい旅の僧の役が多…

「西行花伝」(辻邦生/新潮文庫)

ひさしぶりに「あー、おなかいっぱい小説読んだ!」 と思えた一冊。 歴史小説としても、恋愛小説としても充分楽しめます。 保元の乱をピークとして、西行が生きた平安末期~鎌倉幕府成立までの時代の空気が生き生きと描写されており、ぐいぐい引き込まれまし…

「風の琴」(辻邦生・文春文庫)

いつも思うことですが、いい本に限ってどうしてすぐ絶版になるんでしょう。 文庫で増刷されなかった本は、早晩「消えて」しまうので、 これ!と思った本が文庫化されたら 即その場で買うしかありません。 数年前、堀田善衛の「海鳴りの底から」が都内の紀伊…

親と上司は選べない

週刊新潮に連載中の人気コラム、文庫本第3弾です。 ☆「窓際OL 親と上司は選べない」(斎藤由香著・新潮文庫) 著者の斎藤由香さんは、作家・北杜夫の娘さんで サントリーの健康食品事業部に勤務する現役OL。 3冊目のこの本は、会社員にとって最大の災難「ダ…